ヒントはテレビ。3万本ものストローが作り出すアートな写真

2017.04.06
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みなさんは普段写真を撮る機会がありますか?近年では携帯もますます進化し、お馴染みのInstagramなど、携帯で撮った写真をアプリで簡単に加工し、すぐにSNSにアップし、世界中の人々とシェアすることも一般的になってきました。私もそんな手軽な写真撮影を楽しむうちの一人ですが、もはや社会現象となりつつあるカメラの世界に登場したのは、なんと3万2千本の黒いストローでできた大きなカメラです。なぜ今の時代に敢えてアナログスタイルなカメラが脚光を浴びているのでしょうか?

2人の芸術家が生涯をかけてこだわった「ストローカメラ」

image by: MICHAEL FARRELL & CLIFF HAYNES

2人の芸術家が生涯をかけてこだわった「アート」が形になったストローカメラとはアートと呼ばれるものは数知れず存在しますが、どのアーティストも思いつかなかった、このストローを使ったカメラを考案したのは、スコットランド人アーティストMichael Farrell氏と、イギリス出身のCliff Haynes氏。

15歳もの年の差ながら、同じアートを追求するパートナーとして、共にこのカメラの完成に至ったのです。

image by: MICHAEL FARRELL & CLIFF HAYNES

Farrell氏のアートの原点は石材彫刻。その後、写真家へ転身した彼が追求したかったのは、フォトグラフィーと彫刻との融合でした。

同じく写真家として活躍していたHaynes氏とともに、それを形にしようと思いついたのが、このストローカメラ

ストローカメラは、多重視点を生み出す、3万2千の黒いストローでできています。

長さ10インチの3万本以上のストローレンズが、口径127mmのカメラの役目を果たし、ストローのうしろにある感光紙に、光がダイレクトに露光する仕組みです。

何度もの試行錯誤を経て、完成させたそう。

ドリンク用の黒いストローの他は、見事に木材のみで作られたそのカメラが映し出す風合いはなんとも絶妙で、被写体となる人物の表情とは無関係に、その人物の持つ儚い一面や醸し出す哀愁を見事に表現しているようで、つい引き込まれてしまいます。

image by: MICHAEL FARRELL & CLIFF HAYNES

今回、Haynes氏へ行った取材によると、まだテレビが新しい電化製品として進化を遂げていた時代に、史上初めて動く物体をテレビで遠距離放送することに成功し、特許を取得した技術者John Logie Barid氏の功績にヒントを得たのがきっかけ。

同じくその技術に興味を抱いたFarrell氏とともに今からおよそ10年前にその研究に着手し、このストローを用いたカメラ作りへと発展させていったとのこと。

image by: MICHAEL FARRELL & CLIFF HAYNES

具体的には3種類のストローと、波状の床材を用いた4つのバージョンを作ったのだそうです。

image by: MICHAEL FARRELL & CLIFF HAYNES

残念ながら、一昨年前にこの世を去ったFarrell氏の意志を継いで、現在もなおアートの世界に従事しているHaynes氏。

あらゆるものが進化を遂げ、現実とバーチャルの境界線すら見えにくくなっている現代において、彼らのような存在はとても貴重であり、物心ついた頃にはすでタッチパネルを使いこなしていたような現代の若者たちにとっては、ある意味「新しい」のかも知れません。

文明の進化はいつの時代も変わらずそこにあるものですが、アーティストたちの情熱もまた、時代に左右されずそこに存在しているもの。

これまでに築き上げてきたアナログの世界とうまく調和していけば、より一層、魅力的で唯一無二なアートが現れるのかも知れませんね。

Strawcamera 公式サイト

 

取材協力:Strawcamera

取材・文/貞賀 三奈美

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