「F-2後継機」の国産は厳しい。軍事のプロが明かした意外な理由

 

関係者にしか知られていないことですが、一例として国産初の超音速機T-2ジェット高等練習機のケースがあります。T-2はカタログデータこそ欧州のジャギュアをしのいでいたものの、デッドコピーだと悪評が立つ側面もありました。トップガンを集めた飛行教導隊でも使用されましたが、パイロットの殉職が相次ぎ、運用開始16年後の1990年4月に予定を早めてF-15DJ(復座型)に機種が変更されたりしているのです。T-2では合計11人のパイロットが殉職しています。

マニアには愛好家が多いF-2戦闘機も、外見からはわからない欠陥の克服に労力が割かれてきました。また、製造コストも1機120億円と、F-15戦闘機に匹敵するほど高くなってしまったのです。

こうした戦闘機や練習機が生まれる根本的な原因は、防衛費における研究開発費の割合が列国に比べて低く(2017年度2.5%)、絶対額も少ないことです。

そこにおいては、外見とカタログデータだけでも国際水準を満たした装備品を開発しようとする点にウエイトがかかり、本当に信頼性の高い兵器を開発することがおざなりになってしまうのは、避けがたいことなのです。

この問題を解決するには、政治のリーダーシップの下、自衛隊の適正規模を国民に問いかけ、自衛隊の規模の適正化と同時に防衛費の適正規模化を図る必要があります。

研究開発の思想、つまり戦略がないところで生まれる国産戦闘機は、マニア的な満足にはつながるかもしれませんが、国防に穴を開ける結果となることを忘れてはなりません。

この現実を理解している関係者は、航空自衛隊は当然として、防衛省にも、そして財務省にも少なからず存在しています。だからこそ、国産断念という財務省の判断を、涙を呑んで受け入れる方向が生まれているのです。

6日になって、読売新聞も関係者に取材した結果として、朝日新聞の後追い記事を出しました。国産断念の方向が一気に動き出した感じです。(小川和久)

image by: WikimediaCommons(z tanuki

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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