金正恩はなぜ、これほどわかりやすく手のひらを返したのか?

 

北朝鮮問題のこれから

では、北朝鮮問題は、これからどうなるのでしょうか?

各国の思惑を見てみましょう。この問題に関わっているのは、日本、アメリカ、韓国、中国、ロシア、北朝鮮です。そして6か国すべてが、「朝鮮半島の非核化をのぞむ」としている。しかし、温度差があります

日本アメリカ韓国は、「北朝鮮に核攻撃されるかもしれないから」反対している。切実です。しかし韓国は、「金正恩と仲よくすることで戦争を回避すること」を第一に考えている。だから、「金正恩のいいなり」になる可能性が強い。トランプは、歴史的「米朝会談」で「核放棄を実現する」決意を示しています。

一方、金正恩は、「核兵器を破棄すれば、フセインやカダフィのように殺される」と確信しているでしょうから、容易に応じないでしょう。「段階的な非核化」などを主張し、見返りに「制裁緩和」「経済支援を求めてくると思われます。

日本の今後の役割は、「非核化が実現するまで、制裁を解除したり、経済支援をしてはいけない」とアメリカを説得することです。これに関して二つの注意点は、

  • 過去にだまされた具体例をあげて、トランプに主張すること
  • アメリカに主張を伝えても、大声で国際社会に主張しないこと

この二番目は何でしょうか? 世界中のメディアを見ていると、どこでも今回の「南北会談」「大歓迎!」なのです。ですから、日本だけ大声で「だまされるな!」と騒げば、「国際的 KY国のレッテルを貼られてしまいます。「日本は、『非核化前提』の対話を歓迎します!」といい、トランプには、「過去のこんな例もありますから、十分気をつけてください」というのです。

中国、ロシアはどう動くのでしょうか? この二国も、一応北朝鮮の核に反対しています。しかし、「攻撃される可能性がある」日米韓とは、切実度が全然違います。中ロは、両国を「合法的核保有国」と認めているNPT体制が崩壊することを恐れている。北朝鮮がOKとなれば、日本や韓国が核保有国になるのを止めるのが難しくなります。

もう一つは、戦争になって「緩衝国家北朝鮮が消滅することを恐れている。「緩衝国家」というのは、両国の主敵アメリカに対する「緩衝国家」という意味です。

というわけで、中ロは、「北朝鮮を守るために行動すると予想されます。具体的には、「北が歩みよってきたのだから、制裁を緩めよう!」という運動を開始する。

日本は、アメリカ経由でこの動きを封じる必要があります。「トランプさん、また北にだまされて、ピエロになりますか?」と。負けず嫌いのトランプさんは、「俺は絶対ピエロにはならない!」ということでしょう。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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