金正恩の意図
次に金正恩の意図を見てみましょう。
米と合意なら非核化途中に支援…習氏、正恩氏に
読売新聞 5/14(月)7:13配信
【瀋陽=中川孝之、ソウル=中島健太郎】北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が中国の習近平(シージンピン)国家主席と今月7、8日に中国・大連で会談した際、非核化の中間段階でも経済支援を受けることが可能かどうか習氏に打診したことが明らかとなった。
金は習に、「非核化の中間段階でも経済支援を受けることが可能か?」と聞いたそうです。予想どおりの展開です。金正恩の父・金正日は、こうやって世界を欺いてきました。
1994年6月、北朝鮮は、NPTからの脱退を宣言した。同年10月、米朝合意。アメリカは、北に軽水炉、食料、重油を提供。北は、NPTに復帰し、「核開発凍結」を約束しました。ところが、北はウソをついて、核開発をつづけた。
2003年、北朝鮮は、NPTを脱退。6か国協議がはじまりました。05年2月、北朝鮮、「核保有宣言」。同年9月、北「すべての核兵器を廃棄する」宣言。現状を見れば、北がウソをつきつづけてきたことは明白。金正恩は、「偉大なお父さんが成功したやり方で、僕も行こう! うまくだまそう!」と決意している。
さて、習はどう反応したのでしょうか?
習氏は米朝首脳会談で非核化合意が成立すれば、段階的支援が可能との考えを伝えたという。
(同上)
これは、日本、アメリカとは違う立場です。「合意が成立すれば、支援が可能になる」と。つまり、「核兵器が残っていても、支援は可能」と。これだと過去の繰り返しになる可能性が高まります。
しかし、これは、北朝鮮、中国、韓国、ロシア共通の立場であることを、私たちは知っておく必要があります。いってみれば、「みんな一緒にだまそうぜ!」ってことですね。なぜ? 中国、ロシア、韓国は、一緒になってアメリカをだまし、北の核保有を黙認するつもりなのでしょうか????
正恩氏は習氏に、「米国は、非核化を終えれば経済支援すると言うが、米国が約束を守るとは信じられない」と不満を表明。
(同上)
「アメリカが約束を守るとは信じられない」
当然です。アメリカは、03年に核開発を放棄したリビアのカダフィを、8年後に殺しています(実際に殺したのは反カダフィ派だが、NATOは空爆などによって、反体制派を支援した)。金がアメリカを信じないのは当然でしょう。
中ロは、「緩衝国家」北朝鮮の消滅を恐れている。両国は、「北朝鮮が存続するのなら、北の核保有は認めてもいい」というのが本音なのでしょう。というのも、北が中国やロシアに核兵器を使うことはありえない。北のターゲットは、アメリカ、日本、韓国なのです。
そして、2回だまされているアメリカが、北を信用しないのもまた当然。というわけで、アメリカと北は、「だましあい」の様相です。正直で、お人好しで、ナイーブな日本は、「だましあい」ができません。だから、トランプ政権と連絡を密にして、過去の実例をだしながら、「トランプさん、だまされないでくださいよ!」とお願いしましょう。