まずは、JESEA設立に至った経緯をお話しいただけますか?
もともと私自身の専門ではなかったのですが、昨年の夏に東大名誉教授で測量工学の分野では世界的権威でいらっしゃる村井俊治先生と出会いまして、その時に「東日本大震災の前に、国土地理院が立てている電子基準点のデータに前兆があった」というお話をお聞きしたんです。ただその時は世の中的に、地震学者以外が地震についてもの申すということが受け付けられないという風潮があったらしかったんですね。
※村井俊治東大名誉教授 |
ところが東日本大震災を契機に世の中の流れというものが変わってきて、いろいろと挑戦している方々が何人も出てこられるようになりました。さらに村井先生からも「広く多くの人たちに地震予測情報をお届けしたい」という思いがあるということをうかがったので、「でしたら一緒に会社を作りましょう」ということで作ったのがJESEA、地震科学探査機構です。
日本は地震大国ですから、統計的にだいたい100年間で1000人以上の方が亡くなる地震というのが7回から8回は来ているんですよ。2000年代に入ってから先日の東日本大震災がありましたが、あと80年ほどの間に6回か7回は来るということになりますよね。それを考えたら、村井先生がお持ちの地震予測方法を使ってサービスができないかと。
電子基準点とはどのようなものなのでしょうか。
国土地理院が阪神淡路大震災以降に立てたんですが、そのプレートを見ると「この受信データは、土地の測量、地図の作成、地震・火山噴火の予知の基礎資料に利用されます」と明記されているんです。つまり電子基準点というのは地震・火山噴火予知の基礎資料の利用のために作られたんです。これが全国に1270箇所立っているんですが、地震学者さんたちは地震予測に使っていないんですね。
であるならば、私たちは測量学的な見地からこれを利用させていただこうということで、村井先生が持たれている地震予知の特許と、現在申請中の特許、この二つの方法を用いて予測をしているんです。
村井先生はこの方法を使って、2000年の1月1日から2007年の12月31日までの8年間に起きた162件のマグニチュード6以上の地震を解析されたのですが、そのすべてで前兆が確認されました。これは逆に言うと「事前にそういう解析結果が見られたら地震が起こるということが予想できますね」ということで、今現在その方法で予測をしています。
そのような観測を続けているJESEAさんが先ごろ、「2013年12月から2014年3月頃の期間に南海トラフでの大地震が起こる可能性が高い」と警告を発しましたが、これについてはどのようなご判断でアラートを出されたのでしょうか。
私たちは「解析値がこのラインを超えると地震が起こる」という警戒ラインを設定しているのですが、今年の6月、四国を中心に宮崎県と和歌山県の電子基準点14箇所で一斉に警戒ラインを超える“前兆”が出たんです。それを地図上に並べてみると、まさに南海地震のエリアなんですね。「これは危険だ」というのが第一報だったんです。
こういう現象が現れてもすぐに地震が起きるわけではないんですが、今度は今年の9月に全国で一斉に出たんです。最初は「私たちの解析ミスじゃないか、こんなはずがない」と思ってもう一度やり直したんですけれど、やっぱり同じような結果になったんですね。「これはどこかで同じようなものを見たことがあるぞ」ということで2010年のデータを確認してみたら、9月に同じような解析結果が出ていたんです。つまり、東日本大震災の半年前に出ていたんですね。
その異常は2010年の9月の場合、2週間でパタッと消えているんですが、今年は9月1日から6日までの間にドーンと出て、パタッと消えている。これも同じです。さらに今年は10月にまた南海エリアで一斉に出ています。つまり南海エリアでは2回も出ているわけで、「これは南海エリアが一番危険性が高い」と分かったわけですね。
もちろん100%来るなんて言えないですよ。言えないですけれども、これだけデータが出ているのだったらそれは公表すべきでしょう、と。来ないかもしれませんけれどもデータが出ているのは事実なんですから。そのような経緯で、6月と9月、10月に反応が出たということはそれから半年と考えると最短で12月、長くても3月4月、つまりこの寒い時期に来るのではないだろうかという予測を出したんです。
JESEAさんでは地震予測だけではなく、火山噴火の予知も行なっていらっしゃいます。過去の大地震の際、連動して火山の噴火があったと言われていますが、東日本大震災に連動して起こるような噴火の予兆は今のところあるのでしょうか。
過去、マグニチュード9以上の地震のあとには100%の確率で火山の大噴火が起きていますが、現在のところは国内の各火山が大噴火するような兆候はありません。
ただ、小笠原諸島で新島ができたり桜島が観測史上最大の爆発的噴火を起こしたりしていますよね。あれはずいぶん離れてはいますが、プレート単位で見るとフィリピン海プレートの東と西なんですよ。なので、フィリピン海プレートの動きが活発化してきたというふうに見て取れるんですね。鳥島でも先日地震がありましたし、私たちのデータでも硫黄島などでも異常値を観測しているので、フィリピン海プレートがおかしな動きをしているとは言えると思うんです。
そうは言っても変に不安をかきたててもいけないわけです。ですから私たちは常にデータを示して、「こういうデータが出ていますから注意してください」という言い方をするんですね。そういう意味では今、データから見て警告を発することができるのは南海エリアだけです。静岡や箱根、三浦半島や房総半島でも異常値は出ていますけれども、今すぐフィリピン海プレートの相模トラフを起因とする大地震が来るとは言えない。だた、かなり注意深く見ていく必要はあると思っています。
では、メルマガのことについてお聞きします。どうしてメルマガという媒体を選ばれたのですか?
最初はアプリケーションという形も考えていました。だけどアプリだと自分から見に行かなきゃいけないですよね。ポップアップっていう方法もありますけれどそれはアラートであって、たとえば気象系のアプリでしたら「大きな台風が近づいている」とか、あるいは地震があった後に震度を伝えたりということはアラートでもいいと思うんですが、「地盤がこれだけ動いた」って毎週毎週アラートを出すわけにもいきません。その点を考えると、毎週手元に届くメルマガというのは我々の事業に合っていると思いました。
そんなメルマガ、どんな人に読んでほしいですか?
まずは大地震が来るだろうといわれている南海エリアにお住みの方、それから東南海・東海、いわゆる太平洋に面した場所に住まわれている方。さらに関東大震災が起きた首都圏、新潟や福井、岐阜、北海道の十勝や釧路といった過去に大きな地震があったところはもう一度起こる可能性があるわけですので、そういった場所の方にも読んでいただきたいですね。
最後に、読者にメッセージをお願いします。
私たち地震科学探査機構は、地盤のデータを分析して異常値が出ている場所に関しては地図上にアラートをつけてお届けしています。さらにデータに基づいて予測される地震や火山の噴火については文章にして配信しています。
究極の目的は、皆様に生命を守っていただくことです。もちろん普段から備えなどはなさっているとは思いますが、私たちの地震予測を見てお住まいの地域で地震が起こる可能性が出てきたとなった時に、さらに気を引き締めるということに役立てていただきたいと思っています。
メルマガの価格ですが、「中高生でもお小遣いで購読できる」ことを念頭に置き210円に設定させていただきました。ですから、より沢山の方にお読みいただきたいですね。私たちは国から予算をいただいているわけではなく、すべてをこのメルマガの購読料だけでやりくりしています。実は今はほとんどボランティアなんですね。ボランティアって長続きしないじゃないですか(笑)。そんなわけで、未来永劫にこの活動を続けられるように一人でも多くの方に購読していただきたく思っています。皆様の購読料でこの事業は成り立っていますので、ぜひよろしくお願いします。これに尽きます。
日々我々は「こういう解析をしたらもっと精度が上がるんじゃないか」ときちんと努力しているんです(笑)。事実、確実に精度は上がってきていると思います。ですから「なんだ、当たらないじゃないか」とおっしゃらずに、長い目で見ていただきたいと(笑)。かなり当たっている方だと思いますけどね。
JESEA(地震科学探査機構)プロフィール
全国1270箇所に設置された国土地理院の電子基準点のGNSSデーターから、東大名誉教授の村井俊治氏と環境地質研究室の荒木春視氏の解析方法により、大地震の前兆現象をとらえて予測。