そこそこ週刊・畠山理仁

そこそこ週刊・畠山理仁

  • 畠山さんならではの目線の情報が届く
  • 世間の情報の真相を見極める力がつく
  • 意見や感想をメールで送れる

畠山さんのヒゲはトレードマークですか?

最初の質問がそれですか(笑)。酒鬼薔薇事件(1997年)のときに、取材で神戸に1ヶ月くらい行きっぱなしで、朝早くから夜遅くまで毎日現場を駆け回っていたら、ヒゲ剃ってる暇がなかったんです。だんだん伸びてきたら「つながるじゃん」と思って。20代で子どもっぽく見えてたんですが、ヒゲが伸びてきたらそうでもなくなってきて「丁度いいじゃん」と思い、それからずっとヒゲを伸ばすようになりました。

そもそも、報道の仕事を始められたきっかけは何ですか?

漠然と文章を書く仕事をしたいなあとは思っていたんです。大学時代、飲み歩いているときに編集プロダクションの社長と出会ってそのことを話したら、「じゃあ明日から手伝いに来い」と言って下さったのがきっかけです。それが大学2年のときのことでした。その会社では取材して原稿を書くことはもちろん、デザイン、レイアウトとか、雑誌編集に関する全般を一から教えてもらいました。気がつくと将来やりたいと思っていたことをやっていたので、大学に行くよりもこっちに専念しようと思いました。

週刊誌のニュースの記事をやるようになって、気がついたときには大学を辞めてましたね(笑)。やり始めたら面白くて今に至るという感じです。 最初からフリーランスで、“社員”というわけではなかったんですが、「5年間は修行しろ」と言われて、5年勤めて独立しました。社員ではなかったけど、その会社を辞めるときは「お世話になりました」と言って辞めました。

家にも帰れず、ヒゲを剃る暇もないほど忙しかったんですね。

でも、家がない生活もそれほど気になりませんでした。むしろ、じっとしているよりも、足を動かしていた方が落ち着く感じです。

畠山理仁さん

フリーランスの記者と、フリーランスではない(どこかに所属している)記者との違いはありますか?

フリーは「不利~」です。政府の大臣の記者会見に入るには、記者クラブというものに所属していないと入れないことが多い。国会の中で開かれる記者会見は、国会記者証というものがなければ取材できない。記者クラブというのは、新聞・テレビ・通信社の記者個人個人の任意団体なんですが、フリーランスだとその記者クラブの許可がないといけないんです。しかも質問しちゃいけないなんて理不尽なルールもある。でも、記者クラブに取材申し込みをしても、結局「一度、社に持ち帰らないと判断できない」と言われる。ものすごく理不尽な世界なんです。

今年2011年1月に自由報道協会を立ち上げられたのは、そういう現状と関係がありますか?

はい。最初に話を持ってきたのは上杉隆さんで、民主党の小沢一郎さんと意見交換をしようというところから始まりました。2009年に政権が民主党に移り、民主党は記者会見をオープンにすると言っていたものの、それがなかなか実現しなかったんです。僕もフリーランスライターがどれくらい記者会見に入れるかを自分で全ての現場に行って取材して『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)という本を出していたし、記者会見のオープン化がなかなか実現しない現実にものすごく疑問を持っていたんです。小沢一郎さんは長らく、記者会見をオープンにしていた政治家で、「情報へのアクセスは記者クラブに入っていようがいまいが、平等にその機会を与えられるべきだ」という考えを持っている人だったので、「それが実現しないのはおかしいんじゃないか」という意見交換をしようと考えたんです。

あるとき、記者クラブの報道で小沢さんの発言が「記者会見はサービスでやっている」という部分だけが伝えられたことがありました。そこだけ聞くと、上から目線で「やってやってる」というニュアンスに聞こえますよね。実際にはそういう意味ではなくて「記者会見とは誰もが参加できる公共サービスと同じものである」という意味だったのに。

小沢さんって、世間では口を開かない、逃げているとか、悪人と言われがちですが、情報をオープンにするという面ではやってきていることは一貫しているんです。だから「小沢さんそんなに誤解を受けるような報道ばっかりされているんだったら、もっとちゃんと説明した方がいいんじゃないですか」と話したところ、小沢さんが「記者会見やるよ」とおっしゃって、話が進みました。そこで、記者会見をやる場合に、小沢さんが取り仕切る会見だと小沢さんの言いたい放題なだけになってしまうので、記者の側が取り仕切って何でも聞けるような環境を作って、記者会見をやっていかなきゃいけないな、というのがあり、僕ら有志で記者会見を開く団体を作ろうか、ということになって今年2011年1月26日に始まったのが自由報道協会(仮)です。小沢さんだけでなく、自分の主張が曲げて伝えられがちな人の意見が正確に伝わるようにというのが目的です。今まで記者会見へのアクセスは非常に限られていて、表に出てくる情報が本当かどうかを確かめることもできないし、不都合な事実は書かれない。“書かれない”ということは、“なかったことになる”ということなんです。日本という国がもっと成熟するためには、情報を独占している人が勝手に情報をしぼるのではなく、記者クラブの報道だけでなく、記者クラブに所属してない人たちの見方も含めた多様な報道がないと、国としてマズいんじゃないかと。とにかく、いろんな人が会見の場に入ることができて、それぞれが独自の観点で情報を発信していけるような場にしたいと思って始めました。今は任意団体なんですが、将来的にはNPOにしたいですね。

最初は(仮)だったんですね。

団体の規約などを決めるまでの間は(仮)として、後で正式な団体名をつけようと思ってたんですけど、もう「自由報道協会」という名前が浸透してたので、変えるものもったいないし、他にもっといい名前も思いつかなかったので、4月に(仮)は外れました。

自由報道協会はどうやって運営しているんですか?

会員の会費と、様々な方からの寄付で運営してます。記者クラブだったら、会見場所や警備費なども全て税金でまかなわれてますが、僕らは全て自分たちで用意しなくてはいけないので、ほとんどがメンバーの持ち出しです(笑)。事務アルバイトの方の給料は寄付でいただいた中から出してますが。ときどき、「商売してるんじゃないか」って言う人もいますが、そう思う方には是非お手伝いいただきたいですね。新規参入大歓迎です。実際は「貧乏暇なし、貧乏持ち出し」です。メンバー全員で役割分担して何でもやる。僕は事務仕事がすごく苦手なんですけど、出席者名簿を作ったり、会場をおさえたり、ときどき自分でも「何やってるんだろう」と思うこともありますが、苦ではない。編集プロダクションでの経験がここで役に立ってるのかな。最初は「1ヶ月くらいで活動が終わっちゃうんじゃないか」と思ってたんですが、いろんな方が応援して下さって、続けることができてます。

ここ最近、おかしいと感じた報道はありますか?

堀江貴文さんの上告棄却が決まったとき、自由報道協会主催で記者会見をやったんです。それを日本テレビは「堀江氏は謝罪をしなかった」と報じました。「終止ムスッとしていた」は主観的な印象だから自由ですが、実際の堀江さんは頭を下げて言葉でも謝罪をしていました。それを「謝罪していない」と報じるのは明らかな誤報、虚報です。「そういうのをテレビの人はどう感じているんだろう。恥ずかしくないのか」と思いましたね。別に堀江さんを嫌いでも好きでもいいんです。でも嘘はマズイ。見てる人は嘘の情報で「堀江=悪人」と刷り込まれてしまいますからね。それはまったくフェアじゃない。民主主義を育てて成熟させるためには多様な意見や報道があるべきだし、見る側はいろんな情報の中から何が本当かを見極める力をつけることが大事なのに、それを邪魔している。

畠山理仁さん

どんなメルマガにしたいですか?

堀江貴文さんや上杉隆さんに「メルマガやったら?」と勧められたので始めたんですが、世の中に出ない情報、報じられないことによって“なかったこと”にされている情報を伝えていきたいですね。雑誌だと編集長がいるので、自分の言葉がそのまま出せるわけではないんですが、メルマガなら自分で書いたものをそのまま出せる。読者はつまらなければ購読をやめることができる。僕がいいなと思ったことや大事だと思ったことを書いて、惰性で取ってる新聞や、惰性で見てるテレビとは違う、面白いものにしたいですね。実は、最初の月の無料期間の終わりが近づいたとき、僕はツイッターで、「つまらない人は解約しないと課金されますよ」ってつぶやきました。そうしたら4人解約した(笑)。でも、そのときに、情報の取捨選択をしている姿勢を見ることができて、「日本は捨てたもんじゃない」と感じました。僕は、より多くの人に読んでいただけるような原稿を書くために頑張るのみ。大切な情報も入れるし、ダジャレも入れたいから、ダジャレが入っても許されるように315円にしたんですけど、読んで楽しい原稿を書いていきたいですね。ちなみに315円にしたのは「サイコ」「最高」「最後」の語呂合わせです。時々、僕個人に「カンパしたい」と言って下さる方がいらっしゃるんですが、お金をいただくわけにはいかないので、是非メルマガを読んで下さい!

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畠山理仁さんプロフィール

大学在学中から編集プロダクションで働き始め、フリーランスライターとして活躍。2011年1月に上杉隆氏らと共に自由報道協会を立ち上げる。著書に『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書 2010年12月)。

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