津田大介の「メディアの現場」

津田大介の「メディアの現場」

  • 各メディアの“思惑”を知ることができる
  • 新しいメディアができあがる過程を共有できる
  • 直接メールで質問やメッセージを送れる

有料メルマガを始めた理由を教えてください。

実は今、政治メディアを立ち上げたいと思っているんですね。新聞やテレビの政局報道は、とにかくつまらない。もっと政策に寄った話を、ネットならではの新しい方法論を使って発信したいと思っているんです。そのメディアを作る原資を稼ぐため、有料メルマガを始めることにしました。詳しくは、創刊準備号の巻頭言「『メディアの現場』創刊にあたって」に書いたので、よければ読んでみてください。

原稿を書かないことで知られる津田さんがメルマガを始めたと聞いて驚いている人も多いと思うのですが、この先続けていけるんですか?

ひどい質問ですね、やりますよ!(笑)

僕、昔仕事で某大手PCメーカーが出していた週刊メルマガの編集長をやっていたことがあるんです。メルマガ編集作業は大変でしんどかったけど、結構好きだったんですね。昔から雑誌が好きで、雑誌的なメディアの編集長になるのが一つの夢だったから。今回もメルマガを作ってみて、「俺、編集したり企画考えたりするの好きだなぁ」と改めて思いましたね。想像していた以上に面白い作業でした。なので意外と原稿も書いていけるんじゃないかと思っています。

今回は創刊準備号の巻頭言を、昔やっていた「音楽配信メモ」というブログみたいな文体で口語的に書いたんですよ。最近はそういう文章をまったく書いていなかったから、自分の中で楽しみながら書いていきたいですね。

どんなコンテンツを出していく予定か教えてください。

僕はもともと興味の範囲や仕事の幅が広くて、すごく雑誌的な人間なんですね。twitterをやっているだけじゃなく、テレビやラジオ、ニコニコ生放送なんかでも仕事している。

ニコ生ひとつとっても振れ幅が大きくて、「テンキャラグランプリ」のようなキャラクターに関する番組にも出ていれば、「号外! ニコニコニュース」のようなニュース番組、「ネットの羅針盤」のようなネットに関するさまざまな問題を考える番組にも出ている。だから、今自分がやっていることをわかりやすい形でまとめて出せば、まさにメールマガジン的なものになるなと。特定のテーマだけ扱うのではなく、雑誌っぽくいろんなことをやっていきたいですね。

あともう一つ、僕は仕事柄、ニコ生やイベントなんかでいろんな人と話す機会が多くて、そういう時にすごくいい話、深い話が聞けることがあるんです。何とかこれをテキスト化して、見やすい形に再構成し、多くの人に届けたいと数年前から思っていたんですよ。それをこのメルマガでやっていく予定です。

ジャンルを限定せずにいろんな人と話しているのが良くも悪くも僕の特徴だし、雑誌ライター上がりということもあって人の話を聞くのが好きなので、これは自分にしかできないことなんじゃないかなと思ってます。トーク内容のコンテンツ化であれば、自分で原稿書かなくていいですしね(笑)。

津田大介さん

「津田大介=twitter」というイメージがありますが、津田さんって活動を見ていると、非常にジャンル分けしづらいですよね。

はい、自分でもそう思います(笑)。世間一般からしたら僕は「twitterの人」なんでしょうけど、twitter以外でもいろいろな活動をやっている。多分、メディアが好きなんだと思うんです。

僕はもともと高校時代、新聞部に入っていたんですね。別冊宝島というムックのシリーズが好きで、雑誌のノンフィクション系ルポライターを目指していた。その後大学に入った時、インターネット革命が起きたんです。「自分でメディアが作れる、それが世界中に届く」というのを目の当たりにして、これは情報の流れが変わる革命だなと。

新聞やテレビといった旧メディアと、インターネットのような新メディアを行き来して活動しているのには、この2つの原体験があるんですね。自分は存在的に紙とネットのハイブリッド的存在だと思っていますし、新メディアと旧メディアをつなぐ存在でありたいと思っています。

今、メルマガを始める人が増えているのはなぜだと思いますか?

雑誌みたいな既存媒体では、どんどん書く場所が減っている。それを受けてメルマガを選ぶ人が増えているんだと思います。あと「読者を選びたい」というのもあるんじゃないでしょうか。

たとえば雑誌って、興味がある人しか買わないメディアだったでしょう? だから「文脈を共有している」という前提で、コラムなんかで極端な表現をしても許される空気があった。要は著者と読者の間で、ある種の共犯関係が成立していたんですね。ところが、そういう文章が不特定多数に向けてネットで公開されるようになると、誤解が加速し、揚げ足取りばかりが増えていった。それは良い悪いじゃなくて仕方がないところなんだけど、あえて文脈をある程度共有できる人に限定して情報発信していこうというのも、それはそれでニーズとしてあるのかなと思います。

堀江貴文さんは「今は電子書籍よりもメルマガだ」と言っていますね。

メルマガには「著者を支援する」というファンクラブ的な側面があって、著者とお金を払って読んでくれている読者との間で濃密なコミュニケーションができますからね。それに一度購読してもらえればスポーツクラブなんかと同じで、毎月自動的に課金されていく。止めるきっかけがなければ、人は止めませんから。電子書籍の場合は買ってもらうきっかけを作らなきゃいけないのに加えて、買い続けてもらう継続性がないという違いがあります。

僕自身がメルマガを発行していくにあたっては、ファンクラブ的な側面ももちろん大事にしたいんだけど、それだけだったらtwitterやFacebookでだってできるから、コンテンツとしても面白い、他のところでは読むことができない、考えるきっかけになる……メルマガを通じてそういう材料を提供していきたいなと思っていたりします。「読み物」が3分の1、「津田大介個人への支援」が3分の1、「新しく作る政治メディアへの投資」が3分の1という割合ですかね。それくらいの感じでこのメルマガを捉えてもらえればいいかなと。

津田大介さん

最後にメルマガ購読を考えている人に向けて、何か一言お願いします。

創刊準備号の巻頭言にも書いたとおり、このメルマガは僕に興味を持ってくれている人が面白く読めるように作っていくつもりで、そこはちゃんとやろうと思っています。

そうしてメルマガで稼いだお金を現在構想中の政治メディアにつぎ込んでいく予定なので、僕自身にもメルマガの内容にも興味はないけど、「『政局』ではなく『政策』にフォーカスした政治メディアを作る」という理念に共感する方がいれば、購読してもらえるとありがたいです。

新たな政治メディアを作っていく過程は、メルマガで定期的にレポートしていく予定です。仮に成功したとすれば、それまでのレポートをまとめて書籍化できるしね(笑)。まあ、今回のメルマガは、かなりやる気ですよ。がんばります。

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津田大介さんプロフィール

1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師。一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事。IT・ネットサービスやネットカルチャー、ネットジャーナリズム、著作権問題、コンテンツビジネス論などを専門分野に執筆活動を行う。主な著書に『Twitter社会論』(洋泉社)、『未来型サバイバル音楽論』(中央公論新社)など。

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