日本を捨て「中国人」になったサムライ。成長するには「気概」を持て

 

ある投資ファンドに、アパレル卸おろし)のM&A案件が持ち込まれた。

そのアパレル卸(おろし)は「提案営業」と「企画力」が強みだという。しかし、実は、卸(おろし)業態の会社のホームページを見てみると、ほぼ例外なく日本中の卸(おろし)会社は同じことをいっていることは皆さんご存じの通りだ。

「提案営業」とか「企画力」などというのは、「強み」でなく、それ以外にやりようがない、その他の戦略が見えないということである。

卸(おろし)業態というのは伝統的に、「工場」と「小売り」の中間に位置し、「ブランド管理機能」「商品管理機能」「ファイナンス機能」の3つを主要素として付加価値を持っていた。しかし、商品管理機能を「小売り」が持ちだした。また、ファイナンス機能を「工場」が持ち始め、業界全体が流通簡素化短縮化SPA化)を行う流れの中で「中抜きされてきたのである。ニトリ、ユニクロなどSPA型専門店が圧勝しているのはこのためだ。

だから、卸(おろし)業態というのは、例えば、その卸(おろし)しか持つことができない強烈なブランドを保有し差別化するか、財閥系商社のように「さらに高度な金融機能」、例えば投資機能を絡めながら流通改革を行うような、投資銀行型モデルを選択しなければ、生き残れない時代になってきているわけだ。

今、日本の多くの企業は、事業環境の変化に対してビジネスモデルが旧態化しているという組織課題に直面している。例えば、構造不況といわれる日本の製造業がそうだ。日本の製造業というのは伝統的に製版分離(製造と営業を別の組織でもつこと)をしてきた。従って、どの製造業にも販売会社というものがある。

製造業が販社を持つのは、親会社が製造する製品のライフサイクルが成長期から成熟期に入るまでは機能する。なぜなら、その製品に対する需要が供給力を上回っていることが多いため、生産機能と販売機能を別けた方が、お互いに得意なところに集中でき効率的だからだ。

しかし、製品のライフサイクルが成熟期から衰退期に入り、競合製品が市場に出回った時、販社は単に製品を売れば良いという仕事のやり方では差別化がしにくくなる。顧客の細かい要求に対応してサービス力を強化しなければ生き残れない。そのとき、製造機能と販売機能が分断され、親会社が「作って終わり」、販社が「売って終わり」という関係になると、「ものづくり」と「顧客の要求」にズレが出てくる。

さらに、日本企業にはもう一つの根深い課題がある。それは、親会社がこうした変化に気づいておらず、「文句を言うなら数字をあげてからにしろ」というスタンスになってしまっていることだ。販社側からすれば、「立て付け」が悪いから売れないのだということになり、親会社からすれば「売ってから考えろ」ということになる。その結果、両者にらみ合いの状況となり、組織が動かなくなるのだ。

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