日本を捨て「中国人」になったサムライ。成長するには「気概」を持て

 

さらに、私は値引き販売常態化している販売価格すべて見直し、12の戦略製品群単位で競争相手の状況を調べた。中々動かない営業マンの人たちをつれ、国立図書館につれてゆき、横に座って資料を一緒に読んだこともある。

その結果、3つの製品は中国からの安価品で安売り競争に巻き込まれていたが、5つの製品は、競合がすでに撤退していて独占的地位を築いていたということが分かった。そこで、いろいろなシミュレーションをエクセルで行い、後者の5つの製品価格倍に上げるという大胆価格戦略を実施した。

こちらも、当初、営業から得意先との関係が悪くなるということで文句が出たのだが「競争相手がいないのだから、なんで高く売って悪いのか」と根気強く対話した。当時を思い出すと、「気持ちの良い喧嘩」を毎日していた気がする。

また、安売り競争をしていた3つの製品についてはカスタマイズを禁止し大量販売のみに限定した。当然ながら、中国の製品に価格で勝てることはなかったが、顧客からの「不要な要求」を排除することで流通効率を高め、固定費を軽くすることは可能だった。製品の絞り込みと価格改定。私がやったことは「魔法の杖」でもなんでもない、改革のABC(A当たり前のことを、B馬鹿にせず、Cちゃんとやる)である。

実は、実際の改革というのは、このように基本実直に、そして、地道やり続けることで成果につながってくることが多い。実際、この販社は5年連続赤字だった状況から、半年で単月黒字になり11ヶ月目に通期黒字となった。プロジェクト最終日に、現場と抱き合い5年ぶりの復活の酒に酔いしれた当時を思い出す。

話は続く。実は、この変化に最も驚いたのは本社トップだった。見違えるように元気になった販社をみて、「現場の戦闘力」がここまで会社を変えるのかと意識あらため、新しい経営者(リーダー)を外部から傭兵。さらに積極投資を行って本丸だった組織改革に取り組みだしたのである。ここまで来れば、私はもはや不要だった。

今、コンサルの中でもこうした現実的なアプローチをとれる人材が少なくなってきた。閉塞感漂う今だからこそ、我々世代が「気概」をもつべきなのだ。

image by:Shutterstock

 

『FRI Magazine』
著者/河合 拓
コンサルティングファーム取締役。講演、セミナーを数多くこなす傍ら、IT企業、製造業、商社、流通・小売など再生案件を手がけた企業は多い。本当の問題解決力を身につけたいと思いませんか。私は、数多くの企業と事業の再生を手がけ多くの成果をあげてきました。私は実際に事業を動かしている実務家です。このメルマガは生々しいプロフェッショナルビジネスの現場から、私自身が解説してゆくノンフィクションストーリーです。
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