がんに効くと噂のキノコを愛猫に試す?医学博士しんコロさんの回答は

 

しんコロさんの回答

カバノアナタケ(学名Inonotus Obliquus)は白樺に寄生するキノコです。白樺自体が寒冷地に自生しているので、日本では北海道東部などに分布している比較的まれなキノコです。白樺の樹液を栄養分にし、長年かけて塊状に成長します。表面は黒色で、断面は黄褐色をしており、一見キノコには見えないその姿から「白樺のがん」との異名もあります。

カバノアナタケには抗がん作用があるとされる白樺樹皮に含まれるベツリン酸が濃縮されていたり、免疫賦活作用のあるベータ・グルカンを多く含んでいたり、質問者さんもおっしゃるように抗酸化作用が強いことなどが知られています。また最近では抗ウイルス性もあることが報告されています。

これらの報告に基いて、カバノアナタケががんやウイルス感染に対して薬理効果があるかもしれないという想定で、研究が進められています。同時に、サプリントなども販売されています。ただし、上記のどの研究もIn Vitro(インビトロ=試験管内の人工的条件での実験)によるもので、In Vivo(インビボ=マウスのがんモデルなどを使用した実際の病態に近い条件)で研究したデータがまだありません。

試験管内のがん細胞や免疫細胞にカバノアナタケ抽出物を加えて起きる反応が、かならずしも経口投与した時に体内で同じ反応が起きるとは限りません。今後、In Vivoの実験で抗がん作用があることを証明し、そしてそのメカニズムを解明されてゆくことが期待されます。

さて、一方でマイタケも抗がん作用があることが知られており、In Vivoの実験データも存在しています。「抗がん作用がある」といわれるサプリメントには様々ありますが、比較的データが揃っているのがマイタケです。カバノアナタケもマイタケもキノコ、つまり真菌類(カビの仲間)です。カビにはベータ・グルカンが多く含まれていますが、このベータ・グルカンが免疫反応をモデレート(変化)させるのです。

僕が本業で研究している免疫学の分野もこのベータ・グルカンを認識して発動する免疫系の反応と、その強化に関してです。その意味で、キノコが免疫反応を修飾する作用があることは以前から関心を持っており、サプリメントとしても期待を寄せている部分です。

さて、前置きが長くなりましたが「しおちゃんの眼に効くかもしれないと言われたら試すか?」に対しての答えですが、まず「効くかもしれない」と言う人がどのような知識があり、何を根拠に言っているかが大切です。次に、自分がこれまでのカバノアナタケに関する研究を読んで「効くかもしれない」と思えるかどうか、それらを元に試すかどうかを判断します。現段階ではカバノアナタケはとても興味深い対象なのは事実ですが、抗がん作用に関してデータがそろっているマイタケの方を選択すると思います。ただし、これもカバノアナタケがダメだと言っているわけではなく、今後研究によってマイタケと比較してどのような抗がん作用があるかどうかが解明されてゆけば判断基準も変わってくると思います。

image by: Shutterstock

 

shinkoro

しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」
著者:しんコロ
ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。
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