家族や親しい友人だと何ともないのに、職場の会食や飲み会、レストランなどの外食であまり親しくない人の輪にいると、ご飯が食べられなくなることはありませんか?緊張して吐き気やめまいを感じてしまう、こうした状態は「会食恐怖症(かるいは外食恐怖)」と呼ばれ、最近では話題になっています。
あなたは大丈夫? 「会食恐怖症」とは
他人と一緒に食事をすると、緊張したり、めまいや吐き気がしてしまうのが「会食恐怖症」の症状です。本人はご飯を食べるのが苦手なことを悩んでいるのですが、周囲の人は、「付き合いが悪い」「お高く留まっている」などと誤解してしまうことも多いようです。
次のような傾向が指摘されています。セルフ・チェックの参考にしてみてください。
□周囲の人が気になって、食事ができない
□外食ができない
□外食が怖い
□口に入れたものを飲みこめない
□箸・ナイフ・フォークを持つ手が震える
□誰かと食事する時、吐き気やめまいがする
□吐き気、胸の不快感
□対人場面での不安や緊張を抱えている
□他人の目が気になる
社交不安障害としての「会食恐怖症」
会食恐怖症は、精神医学的には「社交不安障害(SAD)」の一種とみなされています。人から注目される場面や、人との関わりをもつ場面で、自分が恥をかいたり、恥ずかしい思いをしたりするのではないかと強い不安を感じ、極度に緊張してしまうのが特徴です。
場合によっては、振戦(ふるえ)・書痙(手の震え)・めまい・吐き気・赤面・発汗・動悸などの身体症状を引き起こすと言われ、これが6か月以上続いている場合「社交不安障害」と診断されます。
人前での行動が不適切ではないか、バカにされるのではないか、という強い不安が、社交不安障害です。生涯有病率は3~13%と研究による幅が大きく、発症年齢は10~20代半ばまでが多いです。うつ病やアルコール依存症などとの併存率も高く、男性の方がやや多いと言われています。
未治療のまま経過していることが多く、数十年にわたり症状が続き、学業・仕事・日常生活に支障を来している患者さんも少なくないのが難しいところです。会食恐怖症の場合、20~30代の若いビジネス・パーソンなどが、仕事などを通してこの傾向に気がつき、受診に至っているようです。
気がつくのに時間がかかる会食恐怖症
人前での緊張や不安は、誰でも経験することなので、よほど強い症状が出なければ、会食恐怖症なのかどうかを本人が自覚することは難しいようです。本人も家族も、会食恐怖を、「食べ物が嫌いなのだ」「わがままなんだ!」などと思い込んでしまう場合も少なくありません。
心因性の会食恐怖症は、時間はかかるでしょうが、克服可能なことです。とくに対人的な緊張が解けてくれば、おのずと、食事への恐怖心も少なくなっていくでしょう。
執筆:山本 恵一
心理学者、メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
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