南シナ問題で米国に惨敗。習近平に対する13億の熱狂が冷めてきた

 

また、習主席は就任してから、「反腐敗運動」というもう1つの劇場」を用意して自らの政治的権威の樹立に活用してきた。昨年までの2年間、彼の主導下で反腐敗運動が元政治局常務委員などの大物たちを次から次へと摘発の血祭りに上げ、「劇場」を大いに盛り上げた。その結果、13億の観客からの喝采拍手のなかで、昇竜の勢いを見せたのは習主席自身である。

しかし2015年になってから、「反腐敗運動」も徐々に熱が冷めてきた。定年退職となった周永康氏などの「元大物」たちの摘発を一通りやってから、党内と軍内で隠然たる力をもつ本物の長老たち現役の反対勢力の厚い壁にふさがれた習主席は、期待値の高まった国民にそれ以上の「出し物を提供できなくなった

この1年間、習政権はもっぱら「北京副市長」や「上海副市長」など「副」のつく地方幹部を摘発のターゲットにしてきたが、この程度の「反腐敗」では国民の関心と喝采をつなぎ留める「劇場効果」はもはや期待できない

外交上の「習近平劇場」が白けてきたのと同時に、「反腐敗」という習政権最大の「演劇」もいよいよ、幕を下ろすときが迫ってきている。

その中で、習主席の演じてみせた「天下無敵の大国外交」はただのほら吹きであること、国内の反腐敗運動が単なる「期間限定のパフォーマンスであることが分かってきた。国民の多くはやがて、今までの興奮からさめて目の前の現実に目を転じていくのであろう。

そしてその時、彼らが目にしたのは結局、習政権の下でますます悪化してきた経済状況と、習政権になってからますます深刻化してきた大気汚染などの厳しい現実だ。賢明な中国人民はこれで、「演劇上手な習主席が実は無能愚昧な暗君」にすぎないことに気がつくのではないか。

浅はかな「劇場政治の終焉(しゅうえん)とともに、習主席の権勢が落ち目になるのは間違いない。2016年からの習政権は一体どうやって延命を図るのか。

image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

 

石平(せきへい)のチャイナウォッチ
誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考。来日20年。満を持して日本に帰化した石平(せきへい)が、日本人が、知っているようで本当は知らない中国の真相に迫る。
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