セブンイレブンのEC「オムニセブン」は成功するか?佐々木俊尚氏が解説

 

ただ現状ではオムニセブンは、西武やロフトなどで扱っているクォリティの高い商品を買う人はまだ少なく、セブンイレブンで売っている馴染みのある商品を買う人が多いようです。ここを突破できるかどうかは、かなり難しいところかもしれません。

そもそもいま、人々はそうかんたんにはモノを買わなくなっています。企業がテレビCMを集中的に放送しても、そういうキャンペーンに乗せられる人はそんなにいません。

まあコンビニの新しいお菓子や新しいお総菜、新しい清涼飲料水ぐらいだったら、テレビやネットで「これは新しい!」と紹介されているのを見て、「お、ちょっと買ってみるか」という人はたくさんいるでしょう。でもそれ以上のクオリティの高い商品や、客単価が一万円近くもするようなレストラン、同じぐらいの金額のファッションなどを、流行だからという理由でぽんぽん買う人はもはや少数派になりつつあるのじゃないでしょうか。

その背景には、そもそもデフレ経済がこの二十年ずっと進行してきて、全体に人々が消費する金額が減り消費意欲も減退してきているということがあります。将来が不安ななかで、モノをぽんぽん買うお金があるのなら、少しでも貯蓄に回しておこうというのが最近のマインドになっています。

くわえて、「みんなが同じものを買う」というマス消費と呼ばれる傾向が消滅しつつあるということがあります。以前は画一的な情報が画一的に流され、「他の人も買っているみたいだから自分も買っておかなきゃ」「会社の同僚のあの人よりも、すこしでもいい物を」と思う人がたくさんいて、大量生産の製品が大量に消費されていました。「いい物を持っていれば、自分も偉くなれる」というような幻想もありました。ルイ・ヴィトンのような高級ブランドのバッグを買ったり、BMWやメルセデスベンツなどの高級輸入車を購入するのも、こういう動機の人が多く、「背伸び消費」とも呼ばれていました。

背伸び消費が終わってしまうと、その先で人々はどのようにして消費するようになるのでしょうか?記号消費そのものが消滅するという考え方もあります。

記号消費というのは、商品そのものではなく、商品が持っている社会的な価値である「記号」を消費するということです。商品がもともと持っている機能的価値とは別に、消費社会ではその社会的な価値の方が重要視されていて、その記号的な付加価値を消費するようになっているということです。たとえばクルマの機能は「人を運ぶための移動の道具」ですが、メルセデスベンツなどの高級輸入車には「高い外車に乗っているセレブ」というような社会的意味が加えられています。ベンツを買う人の多くは、クルマとしてのベンツを買い求めているのではなく、社会的ステータスとしてのベンツを購入するわけで、これが記号消費です。

モノの記号的な価値にはだんだん意味がなくなっていくのなら、クルマは単なる「人を運ぶための移動の道具」でいいじゃないか、という風になっていくのは当然でしょう。だから最近の若者はクルマの車種なんかにこだわらず「動けばいい」「軽自動車でじゅうぶん」と言っている人が多い。安価な中古車を適当に乗り回している人が増えているのです。安価で着心地の良いユニクロなどのファストファッションが流行しているのも、機能消費のひとつの表れです。

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