真田丸『第13話』解説。仕掛けた罠で迎え撃つ「ホームアローン」戦術

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 NHK大河ドラマ『真田丸』を放送直後にワンポイント解説する人気連載シリーズ。今回は、城の攻防戦について。ドラマの中では昌幸が徳川軍を城に誘い込んで討ち取っていましたが、そこに敵に打ち勝つための「鉄則」があったこと、お分かりでしたか?ヒントは「迷路」。みなさんが昌幸だったら城に侵入した敵を効率よく倒すためにどのような作戦を立てますか?

今回のワンポイント解説(4月3日)

今回のテーマはもちろん、第1次上田合戦。とはいっても、ドラマである以上、合戦シーンは主人公たちがカッコよく映えるのが優先。僕の立場から思うことがないわけではないのだけれど、今回はちょっと角度を変えて解説してみよう。

ドラマの中では、昌幸が徳川軍をわざと二ノ丸に引き入れ、迷路に誘い込んで討ち取るシーンが描かれていた。実際にあのような戦闘が行われたかどうかは別として、このシーンには、城の攻防戦の重要な原理があらわれている。

城を守る側は、敵を城内には入れたくないのがホンネ。でも、もしどこかを突破されてしまったら、敵を展開させないことが重要になってくる。敵が広く展開してしまったら、城内全体が一気に戦場になって、守備態勢が崩壊するからだ。 そこで、侵入した敵を狭いところ狭いところに追いこんで小分けにすれば討ち取りやすい昌幸がお餅を使って説明していた原理だ。戦国時代後半に喰違い虎口や枡形虎口が急速に普及するのは、「小分けにして狭いところに追いこむ」戦術が徹底してゆくため。このあたりの話を詳しく 知りたい方は、『図解・戦国の城がいちばんよくわかる本』を読むべし!

ところで、有名な六文銭の旗は、ドラマでは今回が初お目見え。六文銭は三途の川の渡し賃だから、不吉だ。その不吉なモチーフは、戦場ではどう見えたのだろう。みかめさんは、味方の兵士たちに「俺たちは一度、三途の川を渡った身だから恐いものはない」と思わせる効果があったと見る。僕は、戦う相手から死神みたいに見えたのだと思う。「テメーら、あの世へ送ってやるぜ!」ってね!

いずれにせよ、戦いの装束というのはカッコよさも大切だけれど、相手を萎えさせる要素も必要(サッカー日本代表のユニフォームは、この点でペケ)。三途の川の渡し守軍団みたいなのとマトモにぶつかるの、イヤでしょう? (西股総生)

 

今週のワンポイントイラスト

神川を渡ったと思ったら三途の川を渡っていた徳川軍。六文銭の旗に導かれてしまいましたね。 真田の六文銭、敵を怖がらせると同時に、味方に「俺らもう三途の川渡っているし、死より怖いもの はないぜ!」と思わせる効果があったのはないか…と思います。

ちなみに拙著『ふぅ~ん、真田丸』では…

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露骨な煽り旗で敵を誘導しております(笑)(みかめ)

 

文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)

ナワバリスト(城郭研究家)の西股総生率いる、お城(主に山の城)と縄張りを愛する3人組

 

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今週の『真田丸』SNS反応【編集部まとめ】

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