会社が勝ちました。ポイントは、その会社での人事の最高責任者である人事部長が、退職届を受け取っていることにあります。そこを裁判所は「会社が退職を承諾したことになり、退職は有効である」と、認めたのです。
通常、退職の撤回は、会社にとって必ずしも問題になるわけではありません。むしろ、引継ぎや新規採用をしなくて済むので、会社にとってはありがたい場合もあります。
ただ、実務的には問題になるケースが2つあります。
まず、先ほどお話したように、すでに後任を採用してしまっている場合です。社員が退職しなくなったからといってその後任の人に辞めてもらうわけにもいきません。そのままでは、人員がダブってしまいます。
もう1つは、辞めてもらいたい社員が退職届を提出した場合です。会社としては、解雇は難しくても本人が自ら退職届を提出するのであれば何の問題もなく辞めてもらうことができます。この退職を撤回されたら、会社はまたその社員をどうするか考えなくてはなりません。
これらのケースのようなことが無いように退職を「確実に」しておく必要があります。では、どうしたら良いか?
まずは、きちんと書面を提出してもらうことです。ある別の裁判では、引継ぎ作業やその当の社員が転職活動までしていながら書類が提出されていなかったことから退職として認められませんでした。
そして、書類を提出してもらったら、それをしかるべき人(経営者、人事部長)がしっかりと受け取るということです。人事の権限がない社員が受け取っても「会社が退職を承諾した」とは認められません(ということはつまり、退職を撤回できてしまうわけです)。
よくあるのが、現場の上長が受け取ってそれをそのまま机にいれっぱなしにしておいた、などのケースです。
退職届を受け取ったら速やかに、経営者なり人事部なりに提出してもらうことを徹底しましょう。これらを徹底するだけで大きなトラブルを未然に防ぐことができるのです。
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企業での人事担当10年、現在は社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツをわかりやすくお伝えいたします。
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