原因は年収の低さ? 日本人横綱がなかなか誕生しない理由

原因は年収の低さ? 日本人横綱がなかなか誕生しない理由
 

モンゴル人力士とさして体形が変わらない日本人力士がなぜトップに立てないのか。人口はモンゴル(287万人)より日本(1億2711万人)の方がはるかに多いのだから、不思議な気がしないでもないが、日本人で最も運動神経がいい若者は大相撲を目指さず別のスポーツに進むのだろう。逆にモンゴルでは最も体格や運動神経に優れた若者が関取を目指すのであろう。

日本人が関取になりたがらない理由はわかるような気がする。トップになっても年収が低い。関取の収入は日本相撲協会から月給で支払われており、関取は自営業者ではなく基本的にはサラリーマンなのだ。 横綱の月給は282万円大関234万円三役170万円平幕130万円十両100万円と案外安い。これに報奨金、諸手当、懸賞金などを加味しても、並みの横綱で年収5千万円大関4千万円平幕2千万円十両1500万円くらいにしかならないようだ。強い横綱だと1億円を超えるというが、それでもプロ野球やプロサッカーのトップ選手に比べればはるかに低い。稼げる期間はせいぜい15年くらいだし、怪我も多く,場合によっては再起不能になる。無理に太らなくてはならないので、健康を損ねることも多く、さらには相撲という格闘技の性質上、活性酸素がたくさん排出され、組織を傷つけ易く、ために平均寿命は、一般人より、はるかに短い。近年なくなった幕内力士経験者の平均寿命は60代の半ばに満たないと思う。力士は、文字通り命を削って相撲をとっているのである。

あれやこれらを考えると、これからもモンゴル人力士を凌駕する日本人力士は滅多なことでは出現しないような気がする。大相撲は日本の国技であり、伝統文化だと能書きを垂れたところで、それは、実のところ、モンゴル人力士たちが削った命の上に成立しているようなものなのだから、大相撲を愛するのなら、モンゴル人の横綱にはもっと敬愛の念を持って接した方がいいと思う。

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image by: J. Henning Buchholz / Shutterstock.com

 

池田清彦のやせ我慢日記』より一部抜粋

著者/池田清彦(早稲田大学教授・生物学者)
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