魚の骨を飲んではいけない。医師が警鐘を鳴らす「魚骨性膿瘍」の恐怖

 

魚骨によるピアス式膿瘍

魚の骨を呑み込むのは体に対して危険です。1842年に世界で最初に報告された魚骨による腹部疾患の症例報告では、胃を穿通した骨が内臓の静脈内に突き刺さり、重篤な静脈炎をきたしたものでした。

その後報告される魚骨性疾患の多くはアジアからです。アジア付近で捕れる魚の骨が小さ目であり、「飲み込まれやすい」からです。1980年代には、香港のクイーンメアリー病院が、117例もの魚骨性疾患ケースを報告しています。

「呑み込まれた」魚の骨は体内でさまざまな場所をピアスのように穿通します。咽頭で穿通すると、頸部膿瘍や甲状腺膿瘍を来し、食道で穿通すると縦隔炎を引き起こします。胃や十二指腸を穿通すると、肝膿瘍や内臓の静脈炎を来します。口腔内の細菌を引き連れた魚の骨は、その細菌による膿(うみ)をつくるのです。

魚骨性疾患の診断・治療・予防

魚の骨は単純のX線写真には写りません。そのため、診断は意外に困難です。最近はCT画像を3次元構成してアングルを変えた切り口で診ることができるようになり、これが診断の進歩をもたらせています。

治療は外科手術。今後は腹腔鏡による手術も期待できるかもしれません。抗菌薬のみでは、「異物による膿瘍は完治できません

最も重要なのは予防。私がやっているように魚料理が出てきたら身構えて、よく見て骨を取り除くことです。白内障や遠視などを持つ高齢者などの視力が弱い方には、「骨のついた魚料理は出さないほうがよいでしょう。わたしの好きな刺身系を振舞ってほしいと思います。お魚料理は健康に良く、美味しいのですから。

文献

Gharib SD, Berger DL, Choy G, Huck AE. CASE RECORDS of the MASSACHUSETTS
GENERAL HOSPITAL. Case 21-2015. A 37-Year-Old American Man Living in Vietnam,
with Fever and Bacteremia. N Engl J Med. 2015 Jul 9;373(2):174-83

image by: Shutterstock.com

 

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