なぜアカトンボは赤くなるか?その謎に隠された老化防止のヒント

2016.09.24
by まぐまぐ編集部
 

ところで、アカトンボのオスは、なぜは赤くなるのだろう

「なぜ」という問いには2通りの答えがあって、一つは進化論的、あるいは生態学的な答えで、もう一つは分子生物学的なメカニズムからの答えである。

オスのアカトンボは、体色が赤い方が、縄張り争いやメスの誘因に有利だ。あるいは日向で行動するオスは強い紫外線から体を守るために体が赤いのだ。すなわち、より赤いオスの方が、生存競争に強く、よりたくさんの子孫を残せたので、オスの体色は徐々に赤くなっていったという説である。

もう一つの分子生物学的な答えは、アカトンボの細胞に含まれるオモクローム系色素には、酸化型と還元型があり、還元型の割合が大きくなると体色が赤くなるという説だ。

たとえば、ナツアカネの未熟個体はオス、メスとも還元型の割合が60%程度であるが、成熟したオスでは90%になるという。メスは成熟しても65%程度にしかならず、その結果、オスは真っ赤になるが、メスは余り赤くならないのだという。還元剤(抗酸化物質)でもあるアスコルビン酸(ビタミンC)を直接、黄色のアカトンボ(メスや未成熟のオス)に注入すると、赤く変化することも分かり、この説は間違いないと思われる。さらには、アカトンボの体内に存在する抗酸化物質を調べたところ、還元型オモクローム系色素そのものであることも分かったという。

問題は、どのようなメカニズムで還元型オモクローム系色素が増えるかということだ。抗酸化物質は人間では老化の予防に有効だと考えられており、そのメカニズムが分かれば、人間の老化防止に役立つかもしれない。もっとも、アカトンボは赤いほど長生きするというわけではなさそうなので、難しいかもしれないけれどね。

image by: Shutterstock.com

 

池田清彦のやせ我慢日記』より一部抜粋

著者/池田清彦(早稲田大学教授・生物学者)

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