朝日と毎日は「民主主義」を心配
朝日は第1面から第2面を費やして「試される民主主義」のシリーズ開始。なかなか意欲的な原真人=編集委員の前書きで始まってはいるのだが、紙面の限りでは、民主主義はしょうもないものだが代わりはないのだから100年後までも付き合うしかないという、「そんなことなら誰だって言えるだろうに」という、超平凡な結論で終わっている。
毎日は米国における「多文化主義」の頓死状態に焦点を当てている。選挙結果を見る限り、「白人労働者の多くは、米国の価値観の中核として育んできた多文化主義を、もはや大事だとは思っていない。……15年時点で憎悪犯罪に関与するヘイトグループは全米で892。その6割が白人優越主義を中核に据えた組織で、このうちネオナチ系は94組織」という。トランプ選挙を側面支援した「新しい白人ナショナリズム運動『オルト・ライト』も、リベラルに譲歩しすぎた社会の巻き戻し」を目指していて、その運動の中心にあるオンラインニュース「ブライトバード」のスティーブン・バノン元会長はトランプの「首席戦略官兼上級顧問」に任命された。世も末である。
東京新聞は「包容社会/分断を超えて(上)」を第1面トップに持って来て、米民主党大会に登場した、パキスタン系のイスラム教徒の米国人で息子をイラク戦争で失った弁護士キズル・カーンさんをクローズアップした。米国憲法修正第14条の市民権条項に「心から感動し」それを「愛して」いるがゆえに米国に帰化したこの人を、トランプは汚らしい言葉で侮辱した。私は、他の多くのリベラル人士と同様に、この一事を以てしてトランプを米国大統領になってはいけない人物と断定し、その評価は今後も変わることはないと思う。