どうも社説がおかしい。元旦から大迷走する大手新聞各紙の「展望」

 

日経は「自由主義の旗」を守る?

日経は何だかぼんやりとした紙面作りで、第1面トップでは「第4次産業革命」とかの技術進歩の問題を取り上げているが、記事に切れがない。社説は「揺れる世界と日本(その1)/自由主義の旗守り活力取り戻せ」と言葉の勢いはいいが、ウーン、「自由主義」って「旗」であって、それを死守しなければならないのかどうか。自由主義が経済学的に「市場経済至上主義」という意味であるとすれば、それは既に死んでいる。国内政治的には多文化許容の寛容主義ということだし、国際政治的には反覇権主義であり、多極化した世界の面倒極まりない多元的な合意形成のシステム作りを支持するということである。

トランプはTPPも反故にするし、中国やロシアの強権主義が幅をきかせているので、「だからこそ、日本は自由主義の旗を掲げ続ける責務を負っている」と日経社説は言う。その旗は何色なのか。何色なのかも分からない旗を日本国民はどうやって掲げるのか

この空元気ぶりは、読売社説にも共通していて、安倍首相は昨年末にオバマとの間で未来志向の「希望の同盟」への決意を表明したので、1月下旬のトランプとの首脳会談でも「首相には国際政治が混迷しないよう、トランプ外交に注文をつけていく役回りも期待される。豊富な政治・外交経験を生かす時だ」と、安倍がトランプの教育係になるべきだとでもいうような傲慢なことを言い募っている。アベノミクスで失敗しTPPで失敗しプーチン来日で失敗した安倍のどこに「豊富な政治・外交経験」が宿るというのだろうか。

日経も読売も、「安倍政権は巧く行っていて訳の分からぬトランプ政権に世界の問題を教えてやらなくては」という、およそ信じられない幻覚ワールドへの漂流である。

image by: Shutterstock

 

高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋
著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
<<無料サンプルはこちら>>

print
いま読まれてます

  • どうも社説がおかしい。元旦から大迷走する大手新聞各紙の「展望」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け