米ソ冷戦時代と米中冷戦時代の違い
トランプ新大統領で、米中冷戦時代が始まる。それで、アメリカは日本との関係をさらに改善せざるを得ない。だから、日米関係は良好になり、日本は楽になる。こういう構図は米ソ冷戦時代と同じ。
しかし、米ソ冷戦時代と米中冷戦時代では、違うこともあります。まず、経済。米ソ冷戦時代、日本経済は、大繁栄しました。しかし、米中冷戦時代に日本経済が、「大繁栄」することはなさそうです。というのも、日本はすでに十分豊かな「成熟期国家」である。「高度成長」するはずがありません。
もう一つは、ソ連と違って、中国は世界経済に統合されている。ですから、今後ますます悪くなっていく中国経済の悪影響は、日本にも及ぶことでしょう。そして、欧州経済にも暗雲が漂っているので、これも日本に影響します。
さらに、日本にとって、米ソ冷戦時代より米中冷戦時代の方が、「戦争の可能性」が大きい。もちろん、「尖閣」のことです。オバマさんは、ほとんどの期間「親中」でした。しかし、2010年「尖閣中国漁船衝突事件」以降、一貫して「尖閣は日米安保の適用範囲」と断言し、日本を守りました。しかし、トランプは、どうリアクションするか発言していない。ですから、中国は、「トランプがどう動くか見てみよう!」と考え、挑発を激化させることでしょう。「うまくいけば、尖閣を取ってしまおう」と考えながら。
そして、最後に、「アメリカの変化」があります。つまり、米ソ冷戦時代のアメリカと今のアメリカを比べると、明らかに今のアメリカの方が弱くなっている。トランプさんが、「日本、韓国、NATO加盟国、サウジアラビアにもっと金を払わせる!」と言うと、支持率が上がるような国になっている。
日本は、こういう変化をしっかり認識し、日米安保をより「双務的」なものにしていく必要があります。それをすることにより、日本はアメリカのお墨つきを得て、軍備を増強できる。そして、「アメリカをもっと助ける」という名目で、「軍事的自立」に近づいていけるのです。
米中冷戦時代が始まる。日本にとって、中国の脅威は変わりません。しかし、2015年3月までずっと「親中」だったオバマ時代より、ずいぶん楽になることでしょう。
もちろん、一瞬たりとも油断は禁物ですが…。
image by: a katz / Shutterstock.com
『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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