問題となる2つ目。教育訓練の命令が、権利濫用となる場合について。これは、裁判例をご紹介します(JR東日本事件)。労働組合のマーク入りのベルトを着用していた従業員に対して、教育訓練と称して就業規則の全文の書写しを命じた事件です。これに対して裁判所は、「違反が軽微であるのに対して、就業規則の全文書写しは、肉体的・精神的苦痛を与えるものであり、合理的教育的意義を認め難く、必要性も見い出し難い」として、権利濫用及び人格権の侵害があったとして、損害賠償を命じています。
この裁判でのポイントは2つ。
- 教育訓練の時期・内容・方法等は、教育訓練の目的に照らして不合理であってはダメ!
- 実施にあたっては、従業員の人格権を不当に侵害するようなものはダメ!
この事件は、教育訓練に名を借りた懲罰目的の嫌がらせ的な命令であり、いわゆるパワハラ行為です。したがって、人格権侵害として、会社は損害賠償責任を負うことになってしまいました。
くれぐれも、教育訓練を行うときは、健全な目的で行って下さい。御社の従業員としてふさわしい人に育てていくことが本来の目的のはずです。目的を逸脱したり、権利濫用はいけません。
以上を踏まえて、あらためてお聞きします。
「御社の就業規則には、教育訓練の定めがありますか?」
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