したり顔で核戦略を進める北朝鮮のミサイルが日本を狙う可能性

 

北朝鮮は日本へ届くミサイルを、1990年代に開発したノドンをはじめ、すでに複数種類配備している。それなのに、日本を優に飛び越える一方で、米本土にもハワイの主な島にも届かない火星12が、5月14日に続いて試射されたからといって、なぜ日本への脅威が高まるのだろうか

その理由は、北朝鮮が核兵器を使用する場合にもっとも合理的な目的、行動、戦力の組み合わせ、つまり北朝鮮にとって合理的な核戦略にある。

それは、なんらかの原因で戦争が始まった場合、または始まりそうだと北朝鮮が判断した場合、まず射程の短い核兵器を使用し、「停戦しなければ射程の長い核兵器も使用する」と警告することによって、米国に停戦を強制しようとする核戦略である。北朝鮮がさまざまな射程のミサイルをそろえると、日本の米軍基地や都市への攻撃も含めて、この核戦略の選択肢が増える。

この核戦略は、通常戦力が劣っており、敗戦した場合は体制が倒れる国が採用するものだが、冷戦中のNATO(北大西洋条約機構)も、ソ連軍の欧州進攻を抑止するため、同じような核戦略をとっていた。

ソ連軍が西ドイツなどへ進攻し、通常戦力による防衛が困難になったときに備えて、NATOはまず前面の敵と戦うための、核砲弾やランス・ミサイル(射程120キロ)などの戦術核兵器を配備した。そして、NATOが戦術核を使用してもソ連が停戦しない場合、次第に後方の部隊や司令部を攻撃し、全面核戦争の可能性を警告するため、パーシング弾道ミサイル(射程740キロ)、パーシングII(射程1,770キロ)、地上発射巡航ミサイル(射程2,500キロ)といった戦域核兵器も配備した。戦闘機用核爆弾には、戦術・戦域両方の任務が与えられた。

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