【沖縄の外人住宅】歴史を活かしてリフォーム、雰囲気のあるカフェが人気

2014.12.22
by kousei_saho
タイトル
 

沖縄、その聖なる気だるさ  港川外人住宅街(浦添市港川)

今回は、港川外人住宅街をご紹介したいと思いますが、その前に、沖縄における外人住宅の歴史を少々。

1950年代、米国が沖縄の長期占領を決めたころ、米軍関係者の家族用住宅が建ちはじめました。当初は、鉄骨とトタン板で組み立てるコンセットというカマボコ型簡易兵舎が主流だったそうですが、台風にとても弱かったとのこと。そこで、それに代わる建物として登場したのが、コンクリート造りの外人住宅でした。箱形の白い建物に、網戸張りのポーチ兼玄関がついた一戸建て。広々とした場所に整然と並んでいる景色には目を見張るものがあったそうです。

典型的な外人住宅

典型的な外人住宅

同じ頃、沖縄住民も復興金融基金の融資制度によって、戦後の本格的な住宅建築が始まりました。ただし、こちらはセメント瓦や赤瓦の木造住宅が主流。フェンスの中と外では風景がまるで違ったことでしょう。向こうは整然としたコンクリートの家並みで、こっちは狭い場所に木造住宅が軒を接していたのです。

ところで、外人住宅は基地の外にもありました。地元沖縄の会社が造った、米国人向け貸住宅のことです。コンクリートブロックを積み上げた組積造という構造で、箱型の内部はいくつかの部屋に分割され、基地内の外人住宅とほとんど同じ構造の建物でした。基地外の外人住宅の工事を請け負ったのは地元の建設業者なのですが、外人住宅の建設を手がけることで技術レベルは大きく向上し、その後の沖縄のコンクリート造の住宅に影響を与えました。ちなみに、基地外の外人住宅は、主な米軍基地の近くに四十~五十戸単位で建てられ、昭和四十五年には全琉で六千戸を数えたそうです(兵士の家族以外にも、沖縄に進出してきた外国商社の経営者・支配人なども入居していたようです)。

本土復帰(1972年)後は、基地の中に高層住宅が建設され、セキュリティやトラブル防止のため、基地内居移住が推進されました。その結果、余った外人住宅が出始め、それが民間に賃貸されるようになり、現在に至ります。ただし、ほとんどの外人住宅街は、本土復帰後の都市開発によって消えていきましたので、現在は、浦添市港川地区(キャンプキンザー)、宜野湾市大山地区(普天間)、北谷町砂辺地区(キャンプフォスター)、沖縄市高原地区(泡瀬通信基地)、読谷村楚辺地区(トリイステーション)などが残るのみです。

写真2 街の人たちがマップを載せた案内板を建てています

さて、今回ご紹介するのは、その中の港川外人住宅街(街の人々は『港川ステイツサイドタウン』という新しい呼び名を定着させようとしているようですが、ここでは昔の呼び名でいきますね)。1970年代前半に開発された住宅地ですが、浦添市港川二丁目(那覇空港から車でおよそ30分)の一角に30邸ほどが残っています。もちろん普通の住居としても使用されているのですが、近年になって外人住宅独特の雰囲気を生かしてカフェ等への転用が起こり、地区全体がカフェ化した人気のエリアとなっています。

ストリートごとにアメリカの州の名前をつけています

ストリートごとにアメリカの州の名前をつけています

ときどき私は、なじみのカフェに行くためにここを訪れるのですが、12月某日、あらためて港川外人住宅街を散策しました。街に足を踏み入れて、いつも感じるのは、懐かしさです。昭和40年代に沖縄で生まれた私にとっては、セメント瓦や赤瓦の木造住宅と共に、コンクリートの外人住宅というのは原風景のひとつ。ここに来ると子供の頃にタイムスリップした気になります。

フルーツタルト専門店 oHacorte

フルーツタルト専門店 oHacorte

さてブラブラしていると気がつくのは建物の窓にはアルミサッシがないこと。昔の木戸のままだったり、玄関も外人住宅特有の内扉があったり。なんだか、やすらぎますね。ただし、建物の屋根がコンクリートの打ちっぱなしで天井がないため、真夏は太陽の熱で室内が暑くなり、クーラーなしでは暮らせないそうです。あと床下もないので湿度も高く、冬は底冷えもするとのこと。

ただ、それでも近年、人気があるのは、家が広く、リビング・ダイニングがゆったりとしているからだそう。また環境がよく、眺望のいいところも人気の理由でしょうね。加えて、広い庭。シンプルな間取り。見た目がオシャレでカワイイってとこも加えていいかもしれません。

雑貨屋さんの窓

雑貨屋さんの窓

ちなみにここ港川外人住宅地は今や半分以上がカフェや雑貨店などのお店なのですが、レトロな建物にオーナーが手を加えているので、さらに建物が個性的になっています。散策して建物を見学するだけでもまったく飽きませんよ。お店はカフェや雑貨店以外にも自家焙煎のコーヒー屋さん、パン屋さん、古着屋に紅型アトリエ、沖縄そば屋等々、こだわりのお店がたくさんありますので、もちろん店をまわってみればさらに楽しいのではないでしょうか。

rat & sheep

rat & sheep

あまりに個性的なお店が多くすべてをご紹介できないのですが、私のお気に入りのお店を1軒だけ紹介しますね。その店は『rat & sheep』。沖縄県産の食材を使った料理とワインが売りの夜カフェです。ウチナンチュの写真家タイラジュン氏と妻、真寿美さんが経営する店は料理とそのホスピタリティーが評判で、コアな常連さんたちに加えて、県内外の写真家、美術家たちが集まってくる一種サロンのような空間にもなっています。本当にふたりの人柄と落ち着ける空間はおすすめですよ(open 17:00~24:00 close Sunday)。

rat & sheep タイラ夫妻

rat & sheep タイラ夫妻

港川外人住宅街。沖縄に来た際は、みなさんぜひ足をお運びください。まだまだ、観光客にとってはメジャーではない知る人ぞ知るレアスポット。散歩やお店のはしごできっと楽しめます。ちなみに、空いている物件もちらほら見かけたのですが…。もし、あなたが大の沖縄フリークだったら…、いっそのこと沖縄に移住して港川外人住宅街に住んでみますか?

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伊波 一志(いは かずし)
1969年、沖縄生まれ。写真家。香川大学法学部卒。2007年夏、44日間で四国八十八カ所1,200kmを踏破。現在、沖縄県在住で、主に『母の奄美』という作品撮りのため奄美大島を撮影中。家族は、妻と三人の子。

 

 

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