日本も移民を受け入れるのか?揺れるEU、迫るテロの危険性

 

ロシアの動き

この難民の動きに合わせて、ロシアが「人道」を前面に、シリアのアサド政権への軍事支援を強化している。ロシアは、シリア紛争をISに対する「対テロ戦争」と再定義して、欧米と連合軍を組み、アサド政権の維持を目指している。

イスラム国が難民を大量にEUへ送り出しているから、先にイスラム国を皆で打倒して元の形にして、その後、選挙でシリアの政権を作れば良いというのである。

ロシアの狙いは、シリアにあるタルトース海軍基地の維持である。すでに海軍陸戦隊はタルトースに上陸しているのは確認できているし、ロシアも認めている。しかし、欧米はそれ以上の軍隊を派遣していると疑っている。

しかし、シリアのムアレム外相は、シリアの衛星TVのインタビューに次のように答えた。「シリアは、もし必要が生じれば、ロシア連邦軍に対して我々の側に立って戦ってくれるよう要請するだろう。現在、ロシア軍は、シリア領内での戦闘行動には参加していない。現時点で、我々はロシア軍との共同作戦は行っていない。シリア当局は、政府との合意なく我が国の領内に存在するいかなる軍隊も、国家主権の侵害とみなす」というが、どこまで信用して良いかわからない。

ロシアは難民問題を契機に動き始めている。

ロシアは、プーチン大統領が国連会議の演説で、イスラム国の討伐を世界全体で行うことを提案し、安全保障会議で合意したいようである。

EUの今後

難民のほとんどが、イスラム教徒であり、異文化の人たちを多数、EU諸国は受け入れることになる。英国も大英帝国当時に多数のイスラム教徒の移民を受け入れたが、その子孫は英国のキリスト教社会に馴染めずに、イスラム教過激派に参加している。

英国の衰退は社会的な混乱も影響している。経済的な繁栄が過ぎると、最初に貧困化するのは、移民たちであり、社会的治安問題が起きやすくなる。子孫たちは英語しかできず、故郷には帰れない。このため、英国社会にいるが適応できずにいるので、イスラム教過激派は、その人たちに狙いを定めて勧誘している。

ローマ帝国の崩壊もゲルマン民族の移民が大勢力になり、兵士の多くがゲルマン民族となったことで、反乱が起きて崩壊したように、社会混乱の初めに異文化移民難民の移動がある。

少数の異文化難民の受け入れは、同化せざるを得ないために異文化難民を受け入れても問題が起きないが、多数の難民を受け入れると、これは文化的な摩擦を起こしてしまう。

勿論、米国のように最初から多数の異文化移民たちから成り立つ国家は、新しく違う文化の難民を多数受け入れても問題は起きないが、EU諸国や日本のように単一民族の国家は、注意が必要である。

特に、イスラム教とキリスト教は歴史的に十字軍などの紛争が多く、社会適応ができない時に過激思想に向かう危険性がある。

日本への影響

ドイツは少子高齢化問題を移民で解決しようとしているし、難民も積極的に受け入れようとしている。しかし、日本は難民を2014年に11人しか受け入れていない。

このため、国際的な批判を受けており、法務省は難民の受け入れ審査の迅速化を行うという。政治難民しか日本は受け入れていない。経済難民を認めていない。これは正しいと思うが。

また、移民政策では、法務省は外国人の入国や在留に関する今後5年間の施策の指針となる「出入国管理基本計画」をまとめ、専門的な知識や技術を持った外国人の受け入れを現在の基準にこだわらず「幅広い視点で検討する」と明記。当面は既に在留資格への追加を決めた介護分野で促進し、今後も拡大を検討するという。

日本は、ドイツと同じような少子高齢化が進んでいるので、文化的親和性がある親日仏教国家の移民を積極的に受け入れるべきであるが、それをしないために、失われた20年が過ぎ、一時的に回復したが、長期停滞モデルのままである。

しかし、EUの難民問題、中国経済の減速、米国の利上げなど、世界的な問題が累積してきた。

さあ、どうなりますか?

参考資料:Europe migrant crisis: Hungary PM calls for ?3bn Syria aid package

image by: Shutterstock

 

国際戦略コラム有料版』より一部抜粋

著者/津田慶治
国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。日本文化を掘り下げて解析して、今後企業が海外に出て行くときの助けになることができればと思う。
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