「ミスドゴハン」は戦略的に正しいか?
さて、今回ミスタードーナツは、業績不振から抜け出すために「ミスドゴハン」をスタートさせたわけですが、果たして戦略的に正しいといえるのでしょうか?
ここでは経営戦略のフレームワークを活用して検証してみることにしましょう。
経営戦略を立てる際に、事業拡大の方向性を検討するために活用されるフレームワークに「アンゾフのマトリクス」があります。
このフレームワークは、製品と市場から取るべき戦略を導き出すために『製品・市場戦略』とも呼ばれています。
企業は通常、既存製品を既存顧客に販売して事業拡大を図ります。
たとえば、ミスタードーナツであれば、ドーナツをターゲット顧客に販売して売り上げアップを目指すということになります。
実際にミスタードーナツでは今期に入って宇治茶専門店や人気ラーメン店、ハウス食品など様々な企業とコラボして魅力あるドーナツを次々に投入してきました。
最近では8月にタニタ食堂でおなじみのタニタと共同で、健康志向を踏まえた野菜を使用した「ベジポップ」を開発しています。
加えて、トレンドに乗るために、シーズンごとに「インスタ映え」するようなカラフルなドーナツを投入し、若い女性の心を惹きつける努力も行っています。
このように既存のマーケットに既存製品を販売していく戦略は「市場浸透戦略」と呼ばれています。
一方、既存顧客に既存製品を販売していくといずれマーケットは飽和状態になり、なかなか売り上げを上げることは難しくなります。
たとえば、ミスタードーナツは前述したように市場の縮小に悩まされており、まさに飽和状況に陥っているといえるでしょう。
そこで事業を拡大するためには、3つの方向性の戦略を検討することができます。
一つ目は、既存顧客に新製品を販売する戦略。これは「新製品開発戦略」と呼ばれています。
たとえば、ミスタードーナツが既存顧客にトーストやピザ、パスタなどのドーナツ以外の新メニューを販売するのはこの「新製品開発戦略」といえるでしょう。
続いて二つ目は、既存製品を新たなマーケットで販売する戦略であり、「新市場開拓戦略」と呼ばれています。
たとえば、ミスタードーナツであれば、ドーナツ店をアメリカや中国、台湾など海外で展開するなど、新市場に進出する戦略が該当するでしょう。
そして、最後の三つ目は、新製品を新市場で販売する「多角化戦略」になります。
たとえば、ミスタードーナツの「ミスドゴハン」のケースで考えれば、新たなメニューでこれまでミスタードーナツを利用してこなかった顧客層を取り込もうという狙いであれば、この「多角化戦略」に該当するということになるのです。
この「アンゾフのマトリクス」でミスタードーナツの戦略を読み解くと、今回の「ミスドゴハン」は既存顧客に新製品を販売する「新製品開発戦略」、そして新たなメニューでこれまでミスタードーナツを利用してこなかった顧客の取り込みを図る「多角化戦略」ということになり、戦略のセオリーに沿った選択をしていることがわかるのです。