日本には見えていない、この10年ではっきりした世界の対立構造

 

2点目は、国家財政と通貨という問題です。ビットコインの乱高下が話題になっていますが、これは「無価値なものに資金が流入してバブル化」しているのではありません。「国家財政が債務超過化する」こと、つまり「マイナス」を忌避してプラマイゼロに資金が流れてきているだけです。

ですから、余剰資金によるバブルという観点よりも、「国家の信用力低下」というストーリーで見るべきなのでしょう。その意味で、中国だけでなく韓国などでもビットコインへの警戒感が出てきているというのは重要です。

一方で、日本の場合は「長期悲観」ということで「円の先安感」があるわけですが、それはちょっと測定ミスという面があります。「国内の個人金融資産」とオフセットできる日本の国家債務というのは、国家全体、通貨圏全体で見れば決して不健全ではないわけで、短期から中期ということでは、むしろ円高要因があるという見方もできるわけです。

ということは、日本という「企業」のCEO・CFOがしっかり大局観を持っているのであれば、ここは思い切って「世界でファイナンスをして資金を引っ張ってきて」最先端、つまり巨大なビッグデータによるAIであるとか、バイオ製薬、今度こそまともな金融立国といった高付加価値の内容へと、企業をリストラ(再構成)する時期なのではないかと思うのです。

3点目は軍事という問題です。現在の状況は、例えばナショナリズムとグローバリズムの階層文化であるとか、国家債務の危機であるとか、一見すると1930年代危機の構造に酷似しているように見えます。

そこに、例えば米国のF35増備であるとか、中国の原子力空母構想といった話を加えると、危険極まりない、これこそ1930年代危機の再来だという恐怖に駆られるのも分からないではありません。

ですが、F35とか原子力空母といったものは、1930年代の兵器とは全く次元が異なります。というのは、構造的に実戦に向かないという欠陥を抱えているからです。それは「高額に過ぎて損失に耐え得ない」ということと、「実戦運用時のメンテコストが高額すぎて実用にならない」ということなのです。

つまり、あくまで威嚇という格好で軍事バランスを維持する、つまり抑止力兵器ではあるものの、実戦投入すると「それだけでメンテコストが国家を押し潰す」し、「まして全損のリスクは取れない」ということ、つまりは実戦に投入できない兵器であるわけです。

ですから、こうしたハイテク兵器というのは、ローカルにしがみつく世論の安心感を政治的求心力にするためのツールであり、また「モノという内需拡大のツールであるわけですが、それ以上でも以下でもないわけです。また、仮にそのレベルを超えた軍拡競争に陥ったとしても、その出口はドイツの1939年の破綻ではなく、ソ連で1990年に起きた破綻という形態を取る可能性が強いのではないかと思います。

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