日本には見えていない、この10年ではっきりした世界の対立構造

 

その意味で、北朝鮮危機というのも、経済制裁がある臨界点を超えて機能し始めた際に、それでも高価な軍拡を続けるのであれば、ソ連型の自滅というシナリオに近い格好になるのかもしれません。その場合も、日本は「反日の統一韓国成立を警戒する、あるいは国内にそうした存在への過剰な敵意が生まれることへの警戒も必要かもしれません。

話が大局から具体的な問題へと流れましたが、3つの危機、つまりグローバリズムとナショナリズムの支持階層分化の問題、国家財政と通貨の危機、軍拡の危機という3点が恐らくは2018年の危機を見ていく上での重要な軸なのだと思います。

そうではあるのですが、危機が1930年代のような大規模な破綻へ向かう可能性は低く、むしろ部分的にソ連崩壊のような破綻が起きるのではないかという観点で考えるべきなのだと思います。年末年始におけるイランの動揺もそういた予兆と見ることができるのかもしれません。

その一方で、極めて高い教育水準を有した分厚い人口を擁する日本が、ローカルな世界に沈んでいくというのは、全くもって勿体無い話であり、非合理な、自然の流れに反した話であると思います。

いい加減に、産業構造の転換を図って、高付加価値産業の流出を止め、今度こそ金融立国ができるようなカルチャーの修正をやり、バカバカしいほどの低生産性社会を止めるようにしなくてはなりません。金が必要であれば、世界から調達すればいいのです。

その意味で、安倍政権に問題があるとしたら、そうした構造改革について、全く切迫感がないし、そもそも高付加価値創造型の産業に対して理解がないということであり、この点に関して強い修正を求めたいと思うのです。

やや総花的な論になりましたが、年始の観点として、皆さまのディスカッションのたたき台として頂ければ幸いです。

image by: Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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