プーチン圧勝も、ロシア大統領4期目の予想以上に厳しい船出

 

2016年11月、「大いなる希望」が現れました。そう、アメリカ大統領選で「プーチン愛を公言するトランプが勝った。ロシア政府も、ロシア国民も、「これで制裁は解除される!」とワクワクしたものです。

しかし、実際彼が大統領になると、「意外と大統領は何もできない」ことがわかってきた。トランプは、「親ロシア」「親プーチン」なのに、民主党、共和党の「反プーチン派」が強く、関係を改善することができない。それどころか、米ロ関係はますます悪化しています。最近も

  • 米財務省、ロシア人ブラックリスト「クレムリン・レポート」を発表
  • 米財務省、「米大統領選への介入」を理由に、24団体・個人に新たな制裁を発動
  • トランプ、イギリスでロシア人元スパイ・スクリパリが殺された件で、「ロシアがやったのだろう」と発言

印象では、ロシアと欧米の関係は、「修復できないほど悪化している」ように見えます。それが原因で、ロシア経済は低迷しているのですね。

思い出してください。プーチンの1期目、2期目は年平均7%の成長だった。では、プーチン3期目は?

  • 2012年:3.66%
  • 2013年:1.79%
  • 2014年:0.74%(この年、クリミア併合、対ロ制裁発動)
  • 2015年:-2.83%
  • 2016年:-0.23%
  • 2017年:1.8%(原油価格は30ドル台から60ドル台に回復)

ドルベースの名目GDPを見ると、さら驚愕です。プーチンが大統領に返り咲いた2012年=2兆2102億ドル。2017年=1兆4693億ドル。約34%減少(!)しています。私がしばしば、「制裁でロシア経済はボロボロになった」と書く理由がわかることでしょう。

というわけで、プーチン4期目は、「苦難の船出」になります。「欧米と和解して、制裁を解除してもらうこと」が国の発展には不可欠。しかし、「クリミア併合」は、「プーチンの歴史的偉業」になっているので、絶対返せない。結局プーチンは、「クリミアを返還せずに、制裁を解除してもらう」という「神業」を成し遂げなければならない。

しかし、逆に「俺たちは何も悪いことをしていないのに不当な制裁を続ける欧米が悪い!」という、ロジックを強化しながら進んでいく可能性が強い。世界はますます不安定化していきます。

image by: Free Wind 2014 / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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