自分の中の「赤ちゃん」を褒めるセルフ・コンパッションって何?

 

重要なのは、自信ではなく…!?

実はテキサス大学の教育心理学者であるクリスティン・ネフは「自信よりもずっと重要なものは『セルフ・コンパッション』である」と言いました。コンパッションは「思いやり」や「慈しみ」という意味。すなわち「セルフ・コンパッション」とは、「自分への思いやり・慈しみ」です。日本語にするなら「自慈(じじ)」なんて訳が当てはまるかもしれません。語感がジジイっぽくて申し訳ありません。

何にせよ「セルフ・コンパッション」。分かりやすく言うなら、親が子供にたいして抱くような愛でしょう。親は子供がどんな失敗をしても、見捨てたりしません。間違ったことをしたら、もちろん反省を促しますが、だからといって「あなたは何やらせてもダメだ! 間違った存在なんだ!」なんて言うことはありません。または「このコは受験に失敗したから価値がない」「恋人にフラれたからダメ人間だ」なんて思って、一つの失敗のたびに放り出すなんてことはありません。

何をしても、根本的に子供の存在を受け入れています。うまく行かないときは励まし、成功したときは大喜びしてあげたりします。このような気持ちこそが「セルフ・コンパッション」なのです。

よって大切なのは、これを自分自身に抱くこと。これこそが「自信」なんていう、あいまいで弱々しいものより、ずっと強く、気持ちを高めるキーワードになるのです。

親は何をしてもほめる

では具体的にどうすればいいのでしょうか? それこそが「赤ちゃんをほめるように接すること」です。親は赤ちゃんにたいして、何かをするたびに全力でほめます

「うわー! 笑った! すごい!」
「『ママ』って言えたよ! 天才ー!」
「歩いた! 歩いたよー! この子は成長が早いー!」

そんな風に、一つ一つの行為によって大喜びしてほめます。その結果、赤ちゃんはそのテンションを嬉しく感じて「もっとやろう! もっと!」と思えて、どんどん成長していきます。

逆に、

「笑ったけど、笑い方がイマイチだね」
「『ママ』って言ってるけど、『お母さま』って言えないのはダメね」
「歩いたけど、歩き方が美しくない」

こんな風にいちいちケチをつける両親は存在しませんし、これを繰り返していたら、赤ちゃんはそのネガティブなテンションを感じて、どんどん発育が遅くなる可能性もあります。

他にも、歩いて転んでしまったときに、「よしよし! 大丈夫! 大丈夫よー!」と親はすぐに抱きかかえてあげるでしょう。逆に転んだときに「転ぶなんて、このコはどうしようもない…! これから先の人生でも転びを繰り返してどんどん転落していくんだ…!」なんて親もいません。

しかしおそらく、あなたが大人になって、何か失敗したときに、それと近いセリフを自分に言ったりしていることはないでしょうか。おそらく思い当たる人も多いはずです。何をしても、どんな小さなことでも、全力でほめる。また失敗したとしても、そんなの気にせず「大丈夫、大丈夫!」と受け入れてあげる。そんな風に、赤ちゃんに接するように、「あなた自身」に接してあげてください。

「今日は、イヤな上司と笑って話せたの!? えらい! よくやったねー!」
「仕事でレポートうまく書けなかったの? でもシメキリに間に合ったのはす
ごいよ!」
「失敗しちゃったの? 大丈夫、大丈夫! そんなのまったく気にしなくてい
いよー!」

こんな風に、何があっても包み込むこと。これこそが「セルフ・コンパッション」であり、自信よりもずっと素晴らしく重要なことなのです。

print
いま読まれてます

  • 自分の中の「赤ちゃん」を褒めるセルフ・コンパッションって何?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け