さて、ここからが本日の問題なんですが、もしこの男性が死亡してその時に生計を維持していた妻が居たとします。この時は妻に遺族厚生年金を支給という話になりますが、遺族厚生年金って死亡者の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3の額とよく言われます。まあ、今までずーっとメルマガで書き続けてきた事ですので、ご存知の読者様は多いはず^^;
しかしこの男性は年金の繰上げをやってしまって、本来の老齢厚生年金が110万円から973,359円に下がっています。じゃあ、もしこの男性が死亡して妻に遺族厚生年金が支給される際は973,359円÷4×3=730,019円に下がるのか。
実はそうはならない。
遺族厚生年金を支給する際はあくまで死亡者の本来の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3を支給するものとなります。だから、110万円÷4×3=825,000円が遺族厚生年金となる。
今回は記事を簡易にして、いきなり老齢厚生年金額で示してそれの4分の3にしましたが、考え方としてはあくまで死亡者の年金加入記録を用いて遺族厚生年金を計算するという事です。
逆に65歳以降の年金を貰うのを遅らせて年金額を最大42%増やす(最大60ヶ月間で1ヶ月遅らせるごとに0.7%増える)年金の繰下げがありますが、仮に70歳まで遅らせたら本来の老齢厚生年金(報酬比例部分)110万円+110万円×42%=1,562,000円まで増額します。
でも、遺族厚生年金を支給する際は、この繰下げ増額した1,562,000円÷4×3=1,171,500円で支給するのではなく、あくまで本来の65歳時点の110万円÷4×3=825,000円で支給する。
だから、遺族厚生年金を支給する際は死亡者がたとえ年金の繰上げで減額された年金を貰っていてもそのデメリットは遺族厚生年金には影響しませんが、逆に年金の繰下げによる増額メリット分も遺族厚生年金には影響しないという事です。
ところで「国民年金から支給される老齢基礎年金は遺族年金にはならないの?」と思われた人もいるかもしれませんが 、国民年金からの遺族給付は遺族基礎年金といって、「18歳年度末未満の子が居る配偶者」または「18歳年度末未満の子」にしか支払われませんので、そもそも18歳年度末未満の子がいないと始まりません^^;
● 遺族基礎年金(まぐまぐニュース参考記事)
※追記
18歳年度末未満の子は、もし子に障害等級2級以上に該当する程度の障害がある子の場合は20歳到達月分まで延長される。なお、障害等級は障害年金の等級と同じであり、現在持ってる障害手帳の等級が2級以上だからそれで該当という事にはならない。障害等級2級以上に該当してるか認定するために年金専用の診断書の提出が必要。
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