そして、問題なのは、その買取価格です。同じマンションで同規模の部屋の昨年の取引価格の1/2~1/3なのです。リースバックなので、ある程度安いのは当然ですが、これではあまりに低過ぎます。
高齢女性は、自分の資産の市場価値がよく分からず、自分のマンションの将来の維持管理計画も分からず、ただ、テレビニュースで煽られた不安と、有名人起用の広告と親切そうなビジネストークであっという間に、「カモ」になった訳です。知識のない高齢の方だったから足許を見られたのです。
このケースでは、たまたま理事長が知ったことにより、寸前のところで、本契約を阻止することができました。でも、知らないところで、こういうことは起こっているんでしょうね。
理事長は、がっかりです。これまで、がんばってマンションの資産価値を上げる努力をしてきたのに、それすら、無関心な組合員には伝わっておらず、一律に、不安を煽るニュースに影響されてしまうのだ。そして、市場価格の1/2~1/3の価格での取引事例ができたら、そのこと自体がマンション全体の資産価値を下げることになる…と。
このお話から、2つのことを学びました。総会でどれだけ説明しても、伝わっていない組合員はいるんだということ。総会に出てこない高齢組合員には、総会議案書を届けながら、将来の修繕やお金の計画について口頭で説明するぐらいのことがこれからはやはり必要だということです。実際に、これを実行している管理組合もあります。
組合員が自分の資産に関する無知から不利益なビジネスに巻き込まれないようにすることは、マンション全体の市場価値を守るためにも必要だということです。