筆メーカーが生き残りをかけて一念発起した「熊野筆」成功物語

 

まず「ターゲット」が欲する“基本効用”と“機能効用”について考えます。「ターゲット」は主に「きれいになることを切望する女性たち」で「基本効用」は、よりきれいになれることで「機能効用」は、化粧筆として思い通りに素早く簡単にメイクできること、さらに「デザイン」も加わります。「白鳳堂の筆」は、それらを充分満たせる「機能・品質」を持っていました。

さらに「ポジショニング」については「きれいになりたい女性は、価格に対しては鷹揚」であり、品質・機能・デザインを満たせれば愛顧を勝ち得るのは適うこと、収益的にも充分にボリュームがあり魅力的な市場であると言えます。この層を基盤とすることで“戦略的な優位性”を持ち得て、業績・業容とも確実に拡大・拡充を実現させて行こうとしました。

「コア・コンピタンス」についても、市場の新たな要望にも敏感に対応して、市場拡大についても東南アジアへの進出をもくろみさらなる自社技術の開発をおこなって「価格対応力」を可能にした新商品の開発をはかっています。生産性向上についても「手作り」の強みを維持しつつも、量産を可能にするために独自製法特許取得)によって非熟練者でもつくれるようにしました。

「白鳳堂」の「コア・コンピタンス」は洋画筆でも活かさたでしょうが、適当な収益を得るためには「市場」が小さ過ぎて「高品質・高価格」での“ポジショニング”では、安定した業績を確保することはできません。中国での製造拠点の移転により「洋画筆市場」での「競争優位性」を確立させる「コア・コンピタンス」は同社にはなかったと言えます。

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