筆メーカーが生き残りをかけて一念発起した「熊野筆」成功物語

 

ここで「白鳳堂」の“戦略的意味”をまとめていきますと、もともとマーケティングは“顧客”から始まり、そのため「コア・コンピタンス」も「ターゲッティング」も「ポジショニング」も本来はそこ“顧客起点で展開されるものです。「戦略」は、その中において自社が持っている顕在的および潜在的な“強み”と市場での“競争要件”を相関させて優位性の獲得を行うものです。

「白鳳堂」の場合は、もちろん多くの企業がそうであるように「自社に商品製造能力」ありきで、すでに先行させる制約条件があったのですが。しかし優位だったのは、その能力に潜在的な可能性があったことです。そこで取られた“戦略”が「化粧筆」という商品での「市場拡大(創造)」それはより「良い“効用”の提供」で“ポジショニング”と言えるものです。

ここで、実際の顧客開拓の実情について追加情報の提供をします。まず大前提から「価値ある商品効用)」以外にチャンスはありません。ただし、その“価値(効用)”は顧客にとってであって作り手の思いとか努力とにはまったく関係なく関与しません。ただしを続けますが「価値ある商品(効用)」だからといって、顧客がすぐに見つかるなんてことなく、見つけるためには非常な努力を要します。

「白鳳堂」が最初取引のある問屋に打診したのですが、扱ったことがないということで相手にされませんでした。そこであきらめかけながらも海外、とくに欧米の化粧品メーカーに営業を重ねていると“品質”を重視する化粧品メーカーに認められてOEMで提供する契約をつかむことになったのです。

画期的に良い商品であっても、ベンチャー企業ではこんな例が一般的です。今は大企業の京セラでも日本電産でも、また堀場製作所でも日本の大手メーカーには相手にされず、アメリカで認められてそれが跳ね返ってきて日本でも受注を安定して拡大して行くことになりました。稲盛さんなども、雪に濡れたオーバーを焦がしながら販路拡大をしています。

image by: 『白鳳堂』公式ホームページ

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【著者】 浅井良一 【発行周期】 ほぼ週刊

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