【読売】「くせ球」
【読売】も1面トップに2面の関連記事。見出しから。
1面
- 露大統領「年内に平和条約」提案
- 首相に 北方領土棚上げ
- 日本、応じぬ方針
2面
- 露の突然提案 日本困惑
- 平和条約 交渉乱す「くせ球」真意確認へ
- プーチン氏「揺さぶり」度々
uttiiの眼
《読売》がプーチン発言に進呈した呼び名は「くせ球」。しかし、奇妙なことに、《朝日》の記事からイメージされるような唐突感は《読売》の記事からは立ち上ってこない。
1面。プーチン氏の発言は、司会が「北方領土の帰属が変わると、米軍が配置されるのでは」と質問したのに対して、プーチン氏が「まずは平和条約を結ぼう」と言い出し、「年末までに。ほかの条件はつけずに結ぶということだ」と発言。《朝日》の理解とは全く違い、きっかけになったのは安倍氏の発言ではなく、司会の質問だったと言っている。安倍氏が「揚げ足」を取られてしまうさまを読者に印象づけたくなかったのだろうか。しかし、こんな理解では、プーチン提案の矛盾を正確に捉えることはできないだろう。
ヤケに冷静にプーチン提案を受け止めているかに見える《読売》だが、記事には、提案が事前の準備なくなされたことを示す次のような記述もある。タス通信によれば、「対日外交を担当するモルグロフ外務次官は12日、プーチン氏の提案は日本側に事前に通告していないと明らかにした」といい、しかし、「今後、日露の外務次官級で今回の提案を協議する考えも示した」としている。ロシアの官僚機構は、もしかしたら大統領の提案を事前に把握していたのかもしれない。
要するに、提案は日本にとっては突然になされ、しかし、この先事務方で協議するテーマとして大真面目でなされたということになる。その上で《読売》は、「今回の発言は、北方4島の帰属問題の解決を平和条約の前提とする日本政府を揺さぶる狙いがあったとみられる」と評している。
「くせ球」に言及するのは2面の解説的な記事。しかし、その意味内容は、平和条約締結後に2島を返還するという「日ソ共同宣言」に沿った解決を志向するプーチン氏の年来の主張の線を出ない。「年内に」「前提条件なしで」平和条約を締結するという点に意味がありそうだが、その点は深掘りされていないし、実際、過去の発言や今回のフォーラムでの発言の中に、手掛かりがあるとも思えない。
結局のところ、《読売》も「くせ球」を打ち返すことができず、これまでプーチン大統領は「北方領土問題を含む平和条約交渉で、日本に対しさまざまな揺さぶりを掛けてきた」と書いて、自ら納得してしまっている。