世界が認めた「最後の調停官」に学ぶ無敵のコミュニケーション術

 

紆余曲折あった米朝首脳会談の実現を的中

このように島田さんは、国際紛争調停官の体験談を交えながら、一流の交渉術を分かりやすく授けている。このほかにも、「相手はどんな交渉条件を望んでいるか」を明らかにする魔法の質問“WHAT if”、自社を理解している自社の人間が意外と少ない盲点、交渉事を見事に壊してしまう「確証バイアス」など、クスっとなる体験談から「ほう」と唸るテクニックまで、幅広いコミュニケーションスキルを説いている。

しかし、この記事ではもう1つの魅力についても触れるべきだろう。島田さんは国際紛争調停官として活躍しているため、海外情勢にも精通している。このメルマガでは「時事問題ギリギリ解説」と題し、一般の報道メディアでは得られない「世界情勢の正しい理解」を促しているのだ。

2018年6月12日にシンガポールで開催された史上初の米朝首脳会談。約3週間前の5月25日には中止が発表されていただけに、どうなるのか世界中が注目していたが、無事に開催された。ここで注目したいのは、会談の中止が発表された5月25日の段階で、島田さんが「中止は100%ない」と言い切っていたことにある。その根拠を本メルマガの5月25日号より要約してみたい。

紆余曲折あった今回の米朝首脳会談だが、実はどちらの国にも中止できない理由があった。まず北朝鮮の場合、首脳会談を中止すると、高い確率でトランプ大統領が軍事的な対応に動く。金正恩体制の崩壊につながりかねないのだ。そして、対米の後ろ盾として役割を果たしてきた中国(習近平国家主席)に見放される恐れが高くなる上、文大統領の顔に泥を塗ることになるので、韓国との融和も吹っ飛んでしまう。つまり中止は、北朝鮮にとって致命的なミスなのだ。

一方アメリカの場合、トランプ大統領は秋に議会の中間選挙を控えている。ロシアンゲートや異性問題などで痛手を被った支持率の回復が必須な状況で、歴代大統領ができなかった米朝首脳会談の実現は絶対。また、会談を中止すると残されたオプションは、軍事介入のみ。そのためトランプ大統領は、「中止」ではなく「延期」という微妙な変更をちらつかせる発言もあったが、中間選挙がらみでさほど時間が稼げないのも事実。これらを読み解いた上で、島田さんは「100%中止はない」と予測し、見事に的中させている。ここまで両国の事情を読み解いた上で、今後の行方を推測できるメディアは少ない。これも国際紛争調停官が成せるワザなのだ。

print
いま読まれてます

  • 世界が認めた「最後の調停官」に学ぶ無敵のコミュニケーション術
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け