トランプの「中国バッシング」に日本が絶対に乗ってはいけない訳

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11月6日、ニクソン大統領補佐官を務め、トランプ政権で最高顧問的存在を担ったキッシンジャー氏が「米中覇権戦争の行方を基本的に楽観視」との新概念を発表しました。これを受け、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは、この大物親中派の言動と中間選挙の結果から「米国の分断」を指摘し、日本がそれらに惑わされない為の2つのポイントを記しています。

キッシンジャーは、米中覇権戦争をどう見る?

米中貿易戦争覇権争奪戦」に転化してきた。「アメリカで親中派は絶滅した!」ともいわれ、「日本もガンガン中国バッシングを開始しろ!」と勇ましい主張をする人もいます。

私は、「アメリカ国内の親中派が全滅した」という見方にとても懐疑的中国で儲けているアメリカ企業は、全面戦争(戦闘はなくても)には反対でしょう。そして、6日に行われたアメリカ中間選挙上院は共和党勝利下院は民主党勝利だった。そして民主党内には親中派がとても多い

共和党にも親中派はたくさんいます。代表的な大物キッシンジャー元国務長官でしょう。キッシンジャーは、95歳になった今も現役。彼がのぞめば、習近平にもプーチンにも会うことができる。そして、「トランプが勝てたのはキッシンジャーのおかげ」という人もいます。

そんなキッシンジャーは、今の「米中覇権戦争」についてどう考えているのでしょうか?

キッシンジャー、米中は対立を回避できる

ブルームバーグ、11月6日付を見てみましょう。

キッシンジャー氏:米中両国は対立激化を回避できると「楽観視」

ブルームバーグ 11/6(火)16:05配信

 

ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官(95)は6日、米中両国は現在の世界秩序を破壊しかねない対立激化を回避できると「かなり楽観視」しているとの認識を示した。

「世界秩序を破壊しかねない対立激化を回避出来ると『かなり楽観視』している」そうです。

キッシンジャー氏はシンガポールで開かれているブルームバーグ主催の「ニューエコノミー・フォーラム」で、米中の貿易交渉担当者は細かい点にこだわり過ぎることを避け、まず達成しようとしている目的は何か、またできる譲歩とできない譲歩はそれぞれどういったものかを互いに説明すべきだと述べた。
(同上)

「達成しようとしている目的」「できる譲歩とできない譲歩」を互いに説明すべきだそうです。

40年余り前のニクソン政権下で大統領補佐官として中国との国交正常化に尽力し、その後も歴代の米大統領に助言を提供してきたキッシンジャー氏は「ある程度の意見の不一致は避けられないが、世界秩序に対する希望が両国の根本的な対立によって損なわれることを両国が認識するという目標が必要だ」と指摘。「そうした目標は達成可能だと考えており、実際に達成されるとかなり楽観視している」と語った。
(同上)

「世界秩序に対する希望が両国の根本的な対立によって損なわれることを両国が認識するという目標が必要」だそうです。

ところで、「世界秩序に対する希望」ってなんですか?キッシンジャーが発案した新世界秩序」のことを「G2」あるいは、「新型大国関係」といいます。これは、なんでしょうか?要するに、「アメリカと中国で世界を共同統治しよう!」というのです。彼は、自分の回顧録にも、堂々とこう書いています。

周恩来首相と私が秘密訪問を発表するコミュニケで意見の一致をみた時、彼は「これは世界を揺るがすだろう」と言った。40年の時を経て、米国と中国が世界を揺るがすのではなく、世界を構築する努力に一緒に取り組めるようになれば、なんと素晴らしいことだろう。

ルトワックさんは、このことで、キッシンジャーを厳しく批判します。私たちも、「アホか!」と思います。しかし、事実としてキッシンジャーは、「トランプ政権の最高顧問的存在だったことを忘れてはいけないでしょう。(トランプさんの側近は、コロコロかわるので、キッシンジャーが現在どの程度力をもっているのか、正確に把握するのは難しいですが)。

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