「タ行」と「ナ行」の音韻が持つ性質は?
では今回も引き続き、音韻それぞれの性質について、解説していきます。ア・カ・サときて、次はタ行です。
タ行の性質
チ・ツ以外のタ行の調音点は上顎の硬口蓋で、そこを舌先の平たい部分で弾く音ですね。ですから、チ・ツ以外のタ行は、比較的硬い物質に、軽めのものが素早く当たるような性質の音。
でも、カ行の「カンカン」「キンキン」のように、さらに硬度が高く周波数の高い振動ではなく、中音域の柔らかめの音色。また、「ダンダン」などと濁音になると、もう少し周波数が低くなり、重いものが比較的ゆっくり接触した振動がイメージされます。
小太鼓が「トントン」、小太鼓より小さい鼓は「テンテン」、大太鼓は「ドンドン」ですからね。
いっぽう、チ・ツは、舌の接触が軽くありつつ、さらに口腔内を狭めたり、あるいは歯の隙間から、強い呼気をすり抜けさせて出す音です。
- 空気
- 軽い
- 素早い
- 高周波の振動
- わずかな接触
などの性質がありますね。例えば、「チクチク」というオノマトペに、誰もが抱く印象は、尖った何かが、ピンポイントの小さな範囲に当たっている感触ですね。これもまさしく、チという音の性質と、カ行「ク」の音の性質、それぞれを併せて見事に表しています。
続いて「ナ行」
ナ行はタ行と同様に、硬口蓋を舌で弾いて出している音なのですが、(「ニ」においては調音点は少し奥)。タ行に比べてその接触面積と接触時間が長く、あたかも、「んな」「んに」と、前に「ん」の音が含まれているような印象を受けます。
それによって、ナ行の音の性質は、
- 粘性が高く
- 柔らかく
- 丸く
- 鈍く
- 湿気があって
- 時として温かみ
も感じますね、「ぬるぬる」「ねばねば」「ぬめぬめ」などの湿気や粘性、「のっぺり」「ぬぼーっとした」など、鈍い印象、「ぬくぬく」といった温かみ、 また同じナ行でも、「ぬ」や「の」は、暗めの印象を与えるのに対して、イ段の「に」では、「にこにこ」など、比較的明るい性質を含んでいます。これは、他の行でも当てはまることが多いようです。