また、通商国家となった中国にとって、アメリカがドル決済を禁じることになれば、あっというまに中国は息の根を止められてしまいます。現在、このままでは、米中の対立はさらに激しくなり、百年戦争状態となるといった説や、習近平体制は崩壊するとの予測まで出ています。中国が敢えてアメリカと正面から対立すれば、輸出が止まり、まず真っ先に資金不足に陥るでしょう。軍事力を増強するどころではありません。逆に自己崩壊を招きます。
米中貿易経済戦争の本質は、アメリカによる「知的財産を盗むな、不正をするな、WTOの規定を守れ」という要求です。しかし中国は、それを認めないばかりか、中華の正当たる生存権を主張して対抗するばかりです。中国にとって最大の弱みは、窃盗や不法、不正をやめると生存できないことです。逆に言えば、生きるためには窃盗をやめるわけにはいかないのです。
2018年における中国の誤算は、対外的にはカネをばらまいて、対内的には情報規制を強化すれば、アメリカの「兵糧攻め」に耐えられると過信したことでしょう。
習近平のチャイナドリームは、中華帝国の復活を目指すものであり、過去への回帰です。それは、未来志向の潮流とは逆行するものであり、時代錯誤であることは言うまでもありません。中国が世界から敬遠され、警戒されるのは仕方がないことでしょう。かつての盟友であるロシアも、裏では中国のことをどう考えているのかわかりません。韓国ともTHAADを巡る対立など、いろいろありました。アメリカとは貿易戦争中です。まさに四面楚歌状態です。
アメリカによる中国への「兵糧攻め」がいつまで続くのかは不透明ですが、習近平の失脚による幕引きというのが無難なところでしょう。少なくとも、中国共産党内で、それを望んでいる人は少なくないと聞いています。
米中貿易経済戦争の本質は、トランプ米大統領と習近平中国国家主席の私的な考えから起こったことではありません。ここを見誤ってしまうと、「米中の覇権争奪戦」という誤った見解になってしまいます。
本質は、中華の復活という過去を目指す中国vs人類の未来への進路を目指す米国です。言い換えれば、中国の核心的利益vs人類共有の普遍的価値です。これを「第2の冷戦」と称すべきかどうかは別としても、今回の米中の対立を、単なる両国の覇権争奪戦ということのみに矮小化せず、世界共通の問題なのだということを念頭に、世界中のすべての人がこの問題に真剣に向き合うことが必要なのではないかと思います。
image by: Harold Escalona / Shutterstock.com