習近平「米国との武力衝突に備える」発言に日本はどう振る舞う?

 

北東アジアの混乱と日本の針路 ~米朝関係

そして、最後に日朝関係があります。北朝鮮の核開発やミサイルの問題は、日本の国家安全保障上、大きな懸念ですが、本件で、直接的な軍事オプションを日本が持たない中、残念ながら、日本が直接的な役割を果たすのは現実的ではないでしょう。懸念を表明し、国際社会との連携を促し続けることはもちろん必要ですが、ここでもやはり米朝首脳会談の成功を祈ることと、アメリカ・北朝鮮双方に対して、軍事的な衝突に発展しないように思いとどまらせる働きかけが精いっぱいかと考えます。

しかし、今月か来月に行われる可能性があると言われている米朝首脳会談の内容次第では、トランプ大統領の我慢の限界が来てしまい、対北朝鮮軍事行動に発展するかもしれません。特に2020年の大統領選に向けたアピール材料に飢えているトランプ大統領としては、アメリカ国内で「北朝鮮を信用するべきではない」、「北朝鮮のミサイル・核の脅威は受け入れ不可能」、「何らかの対策が必要」という声が高まっていますので、これまでの政権よりもはるかに簡単に、軍事的な行動に踏み切る可能性が高いと考えます。

その場合、どのようなことが起きうるか。

これまでアメリカがクリントン政権時代から何度か北朝鮮への攻撃を考えてきたにも関わらず、それを思いとどまってきたのは、隣国韓国への被害でした。北朝鮮による報復攻撃で、僅か38度線から80キロしか離れていないソウル市は火の海になる可能性が高いため、攻撃を躊躇してきた、というものですが、トランプ大統領が、もし、本当に文大統領を信頼しておらず、かつ事あるごとにアメリカに盾突く韓国など知らない!という考えであったなら、躊躇なく北朝鮮攻撃に踏み切る可能性が高くなります。

さらに、その可能性が高めているのが、中国は恐らく、朝鮮戦争時と違い、軍事的な介入を行わないだろう、とのアメリカ側の見解です。外交上は、北朝鮮の後ろ盾として機能し、ロシアとも差を付けているように動いていますし、実際に中朝国境に、「北朝鮮からの難民流入阻止のため」軍を配置していますが、その部隊が国境を超え、米軍と対峙するシナリオは描かれていません。

特に、仮に戦争になった場合、地上部隊の派兵ではなく、空中戦で決すると思われるだけに、非難こそせよ、軍事介入を行い、できれば避けたいアメリカとの軍事的な衝突に臨むことはありません。先述の様に、年初に習近平国家主席が「アメリカとの武力衝突にも備えるべし!」と号令をかけましたが、それはあくまでも直接的な対峙に備える場合で、“他国防衛”のためではないでしょう。

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