習近平「米国との武力衝突に備える」発言に日本はどう振る舞う?

 

韓国国内については、与野党および大統領府・外交部といった政府・議会では「日本への対抗策」が高らかに叫ばれていますが、韓国国民については、面白いことに、比較的冷静で、徴用工問題にしても、今回のレーザー照射問題でも、文大統領と外交部の対応のまずさを指摘し、日本との関係をこれ以上悪化させるのではなく、まず韓国国内で解決されるべき問題である、との声が多くなってきているようです。

しかし、10日には、文大統領自ら記者会見で「すべての責任は日本にある!」との日本批判を繰り返し、今後、政治レベルでの(そしてビジネスレベルでも)緊張がさらに高まることは必至でしょう。一度振り上げてしまった拳が両サイドにあることと、韓国軍サイドの“つけあがり”を文大統領および政府がコントロールできていない状況が存在しているため、今後、何かしら挑発行為が行われ、偶発的な衝突が起きてしまった場合、最悪のケースでは軍事的な衝突に発展しかねないと懸念しています。

その懸念が現実味を帯びてしまうかもしれないと考える裏には、アメリカの無関心と、中国の無関心があります。アメリカについては、文大統領および政権の北朝鮮への異常なまでの傾倒と、朝鮮半島問題のハンドリングにおいて、アメリカ飛ばしを韓国が行っていることに業を煮やしており、先日のハリス駐韓大使の言葉にもあるように、「米韓同盟がいつまでも存続するとは思ってはならず、在韓米軍もいつまでもいるとは限らないことを覚えておくべきだ」との内容は、有事の際に、アメリカは自国民は守るが、韓国は守らないとのメッセージとも受け取ることができます。

そして、トランプ大統領も文大統領をすでに見捨てており、北朝鮮問題では使えるうちは使うかもしれませんが、すでに信用は置いていません。ですので、日本との緊張関係の高まりに対し、アメリカが間に入ってくれる可能性はほぼゼロでしょう。

中国については、先に述べたように、習近平国家主席はすでにアメリカとの武力衝突さえ覚悟している様子がありますので、近所の出来事ゆえに関心を持って眺めているかもしれませんが、直接、本件に割って入ることはしてこないでしょう。それは、日中関係が比較的友好的である現状を重視していることに加え、四面楚歌状態になっている文政権をサポートする気は全くないからです。

ゆえに、仮に日本と韓国の間に軍事的な衝突が起きてしまった場合でも、中国は懸念こそ示すものの(いつもの外交部の報道官の記者会見などで)、自制を求めるだけで、何一つ行動は起こさないでしょう。そのような特殊な現状を踏まえると、仮に偶発的な衝突が起きてそれが軍事的な衝突に発展してしまったとしても、米中ともに、本件には実質的な介入はしないという見解になります。

もちろん、日本としては、通すべき筋はきちんと通し、できるだけ水面下で韓国政府との調整をすると同時に、国際的な世論にも訴えかけるべく、情報はどんどん提供し、他国からのバックアップ・シンパシーを得るように努力するべきですし、日本側から“偶発的な”事故を起こさないように細心の注意を図るべきでしょう。

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