高校サッカーで前代未聞の誤審騒動。何があったのかを徹底解説

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サッカーに関するメルマガ『J3+ (メルマ)』の著者で、第1回大会から欠かさず観ているという「M-1ウォッチャー」のじじさんが、今年の高校サッカー選手権で起きた前代未聞の「誤審騒動」について解説しています。

■ 山口県大会の誤審騒動

今年の高校サッカー選手権は青森山田高が2大会ぶりの全国制覇を達成したが山口県の代表は西京高だった。5年ぶり3回目の出場だったが1回戦で富山第一高に2対3で敗れて初戦敗退となった。0対2の状況から2ゴールを奪って2対2の同点に追いついたが後半43分に失点アディショナルタイムに勝ち越しゴールを許した。2回戦に進んだ富山第一高は秋田商高に0対1で敗れている。秋田商高はベスト8に進出したが準優勝に輝いた流通経済大柏高に0対1で敗れている。秋田商高はサプライズを起こした。

西京高の県大会の決勝の相手は高川学園高だった。もともとは多々良学園高と呼ばれていたが2005年に経営破綻して民事再生法適用を申請。2006年9月に現在の名前に変更になった。「私立高校を経営する学校法人としては初の民事再生法適用の申請」だったので相当にレアな話と言えたがミスター・トリニータのFW高松を輩出するなどたくさんの名選手を送り出している。高木3兄弟の父親である元プロ野球選手の高木豊氏も多々良学園高出身になる。地元に戻ったGK永石(C大阪→山口)も高川学園高出身になる。

山口県大会の決勝戦は西京高と高川学園高が対戦して1対0で西京高が勝利して冬の高校サッカー選手権の出場権を獲得したが山口県大会の決勝戦が行われた翌日に高川学園高側が「決勝戦において不公正な判定や重大な誤審があった。」として再試合や審判団の資格停止を求める申し入れ書を協会に提出して大きな話題になった。高校サッカーにおいては非常に珍しい話であり、再試合や審判団の資格停止を求めるというのはJリーグでも聞いたことがないレベルの話である。前代未聞の出来事のように思われる。

ハンドだったのか?否か?

特に注目を集めたのは後半のアディショナルタイムの攻防である。高川学園高が波状攻撃を仕掛けてエリア内でシュートを放ったがゴール前にいた西京高の選手の手に当たってハンドのようにも見える。キーパーが飛び出していたので残っていたのはフィードプレーヤーのみ。大チャンスだったので何人かの高川学園高の選手は「ハンド」をアピールしたが聞き入れられず。間もなく試合は終了した。(このシーン以外にも「西京高側に有利な判定が多かった。」とも言われているがその件に関しては真偽は定かではない。)

西京高は県立高になる。一方の高川学園高は私立高になる。しかも、経営破綻となった後は「徳島市を拠点に予備校を経営するタカガワ」が再建者となって経営を譲渡されている。高校野球でも私立校と比べると公立校の方が地元の人に応援されがちである。山口県のサッカー協会の中にも県立校である高川学園高に肩入りをする人が多くて「県立校である西京高を勝たせるために西京高びいきのジャッジが行われたのではないか?」とも言われているがこれについても憶測に過ぎない。全て真偽は不明である。

問題の試合をフルタイムで観ることは出来なかったが「後半のアディショナルタイムのハンドか?否か?のシーン」は動画サイトにアップされているのでチェックしてみたが微妙なシーンである。ハンドと宣告されても仕方がない気もするが、ギリギリセーフのように見えなくもない。結局、どちらとも言えるような審判団にとっても難しいジャッジだった。仮にハンドを取ってPKを宣告していたら西京高側から「誤審ではないか?」と抗議の声が聞こえてくる可能性もあるほどどちらとも言える微妙なシーンだったと言える。

高川学園高が謝罪をして一応は解決

PKか?否か?のシーンについては「サッカーの試合ではよくあるシーンの1つ」だと思う。審判団が決めたことに従うしかないシーンだったと思うので高川学園高の異議申し立てについてはやり過ぎだったのでは?と個人的には考える。あれから2か月以上が経過した後も問題は解決していなかったが1月31日(木)に高川学園高側が「決勝戦でのジャッジがどうだったか?を知りたかったが手法が間違っていた。反省している。」とコメント。主審の資格停止を求めたことなどを謝罪してひとまず事態はおさまったという。

「決勝戦の直後に高川学園高側を抗議をした。」というところまでは情報として得ていたが、その後、「昨年の12月に予定されていた山口県の防府地区の大会は審判を配置できずに延期される事態に発展した。」と報じられている。2月1日に開幕する中国高校サッカー新人大会県予選の開催が危ぶまれたことも高川学園高側が謝罪をするに至った大きな理由と報じられているが、「高川学園高側が主審の資格停止を求めたこと」に対しては審判団は不快に思っただろう。資格停止まで求めたのはさすがにやりすぎだったように感じる。

結局、県協会は「重大な誤りは見受けられなかった。」と回答している。アディショナルタイムのハンドか?否か?の攻防を見ると「重大な誤りではない。」というのは正しいと思うが、明らかな誤審で勝敗が決着するケースも普通にある。特に高校サッカーレベルになると(Jリーグと比べると)審判団のレベルも低くなるので重大な誤審が生まれる可能性も高まる。「明らかな誤審」と思われるケースで不利益を被った側から強い抗議を受けたときに協会などの上層部がどのように判断すべきなのか?は相当に難しい。

今回、高川学園高は再試合を求めたが「誤審が原因で再試合が行われたケースはほぼ無い。去年の天皇杯の名古屋と長野の試合のPK戦がやり直しになったことは記憶に新しいが相当に珍しいケースである。J1は、近い将来、全試合でVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が導入されるようになると思うが、高校サッカーレベルでVARを導入するのはお金と設備の問題でほぼ不可能である。今回の高川学園高の抗議はやりすぎなところもあったと思うが「重大な誤審が起こったときにどう対応すべきか?」を考えるいいきっかけになったのは間違いない。

image by: mohamed_hassan

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