呆れた読売の無関心。強制不妊救済法案を各紙はどう伝えたか?

 

基本的人権に関心がない?

【読売】は2面中央のベタ記事のみ。見出しを以下に。

  • 強制不妊 一時金320万円
  • 与野党 救済法案 今国会提出

uttiiの眼

ベタ記事のみで、しかも被害者側がこの法案内容に強い不満を持ち、批判していることが記事のなかに何一つ反映されていない。 「おわび」の主体が「我々」となったことについては、「旧優生保護法が議員立法だったことを踏まえ、おわびの主体を国民全体を意味する「我々」としたという」とするのみ。驚くほどの無関心を示す《読売》。

旧優生保護法の凶暴性

【毎日】は1面トップに3面の解説記事「クローズアップ」、社会面にも関連記事。見出しから。

1面

  • 強制不妊 一時金320万円に
  • 与野党が救済法案決定

3面

  • 「早期救済」心癒えず
  • 320万円根拠に批判
  • 謝罪主体「国」とせず

27面

  • 法廷闘争 終わらない
  • 期待外れ 被害者ため息
  • 法案早期決定は評価

uttiiの眼

もともと《毎日》のスクープから始まった問題で、記事にも独自の内容、独特の見方が含まれている。

1面記事は、国会が救済法案を急いだ事情につき、「被害者の高齢化などを考慮し議員立法による救済を図った」と比較的好意的に受け止めている。だが勿論、末尾には被害者側弁護団が「320万円では被害回復にならない。被害の重大性に向き合った補償額を定めることを求める」と言っていることにも触れている。

3面も1面の図式を引き継ぎ、まずは議連側が「(被害者が)お年を召しているので、とにかく何か形を作りたいと思った。完全でなきゃ駄目というと、いつまでたってもできない」と言っていることを紹介。「国を相手取った集団訴訟で、判決が1つも出ないうちに国会が救済策をまとめるのは異例のこと」と《毎日》もフォロー。裁判では除斥期間を理由に原告敗訴の可能性が高いことを見越して「判決前の方がスムースに救済が図れる」と考えた議員もいたという。

320万円の根拠については、《毎日》が挙げるのは「スウェーデンの事例」と「ハンセン病損失補償法」。前者は記者会見でも言及されていて、同水準とする形で参照されたわけだが、後者は違う。ハンセン病の場合、隔離政策による被害の一部として強制不妊手術が含まれており、その時の補償金(800万~1400万円)と同水準にするのは難しいという意味で参照されたようだ。同じにすれば、高くなりすぎるということで、こうした記述は《毎日》のみ。

また、今回の救済法案の中身と被害者側が国賠訴訟で求めてきた内容とが食い違う点を7つ挙げ(そのうち、手術記録のない場合の対応については、記録がなくても柔軟に対応することで一致した)、一覧表にしている。まず、国側は謝罪主体を「我々」とし、補償の対象を本人(請求後に死亡した場合は遺族もしくは相続人)に限り、一時金は320万円、被害認定は厚労省内の審査会が行い、周知は国による広報活動とし、有効期間を法施行から5年とする。これに対して被害者側は、謝罪は「国」、補償対象は本人の他、配偶者や遺族、人工妊娠中絶被害者に。補償額は1100万~3850万円、国から独立した第三者機関が被害を認定し、手術記録のある人については通知を行い、時限を設けないものとする。

国賠訴訟では、不妊手術だけでなく、人工妊娠中絶を強いられたり、配偶者への手術で「家族形成権」を侵害されたりしたとの訴えもあるという。

こうしたことまで書いているのは、いや、取材できているのは《毎日》だけのようで、旧優生保護法の凶暴性を暴き出すことに成功していると言えるだろう。同時に、議員側にはそれなりの理由があっての「法案」ということも分かる反面、この内容では、まさしく被害者側弁護士が言うように「被害の重大性」に向き合っていないと言わなければならない。早かろうが何だろうが、やはり、この内容では駄目なのだ。

print
いま読まれてます

  • 呆れた読売の無関心。強制不妊救済法案を各紙はどう伝えたか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け