中国の最大かつ真の弱み「他力本願」を狙い撃つ、米国の兵糧攻め

 

かつての米ソ中心の東西冷戦は、イデオロギーの違いによる、キリスト教文明内部の宗教戦争という側面もありました。東方正教であるソ連・東欧の社会主義体制の崩壊によって、冷戦が終結したという見方もあります。

しかし、米中貿易・経済戦争は、「人類の普遍的価値」と「中国の核心的利益との文明衝突という性格が強いのです。東西冷戦は、右の全体主義であるファシズムと左の全体主義であるコミュニズムという両極端の対決が主だったのに対して、米中貿易戦争はイデオロギーよりも、文化・文明をめぐる総力戦だと見るべきです。

アメリカが関税引き上げによる「兵糧攻め」という戦略をピンポイントで行っているのは、中華文明の最大にして真の弱みを知っているからです。それは古代から今日に至るまで、「他力本願」ということです。

地上の資源のほとんどが祖先たちに食いつぶされてしまった中国では、改革開放後から世界最大の通商国家となり、ほとんどの資源を海外に依存するようになりました。

改革開放から現在に至るまで、中国の経済規模は200倍、あるいはそれ以上に成長したとも言われます。米中貿易・経済戦争について、最初、中国政府は自信たっぷりで、「最後まで付き合う」「中国は長期戦に強いという伝統がある」「自力更生の時代に戻ればいい」など、強気な発言を繰り返してきました。

ただ、私はたいてい中国政府の発言については、「逆」に考えるべきだと見ています。実際、先の全人代では、アメリカを意識してか、「中国製造2025という名称すら使わなくなりました

「自力更生」から「他力本願」へと転換した中国は、通商国家になるだけでなく、他国からのパクリによって技術力を向上させるようになりました。易姓革命の国の本質としては、敵から略奪し、盗むことが生き残りの条件なのです。ですので、アメリカが「技術を盗むな」と要求することは、中国にとっては「死ね」と言われているに等しいわけです。

私が中国についてもっとも不思議なのは、はたしてこの国は債務国なのか債権国なのか、現在も不明だということです。世界一の外貨準備高を有しているといいますが、実際には外国企業の投資金額も含まれているので、実際にどのくらいの外貨準備高なのか、計算方法によって異なってしまうのです。

中国の政府総債務残高は40兆元(650兆円)とされていますが、地方政府は40兆元以上の簿外債務を抱えているという観測もあり、全体で地方政府の負債総額は1000兆円かそれ以上とも目されており、デフォルトが懸念されています。

中国の青少年たちは生きるために「先行消費」というかたちで多大な銀行債務を抱えています。一人っ子政策で「小皇帝」として甘やかされた彼らは、まったく未来が見えない状態で、大卒の半分近くが就職できずに郊外やビルの地下で共同生活する「ネズミ族」「アリ族」にならざるをえないため、精神異常に陥ったり凶悪犯罪に手を染めることも少なくありません。自分の未来まで食いつぶしているわけです。

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