整理しておくべき情報の第2は、タンカー攻撃の一件です。
これは、米国が主張するように「イランの仕業」かもしれません。いかに安倍首相とイランの最高指導者が会談している最中だろうと、イランの革命防衛隊の末端までトップの意向が徹底していない可能性もあるからです。
しかし、よほどの証拠を示さないかぎり、イランと決めつけるのは無理があるかもしれません。それというのも、2隻のタンカーともホルムズ海峡からアラビア海に出るところで船腹に攻撃を受けていますが、確かに「コクカ・カレイジャス」(船籍パナマ)は左舷に2発被弾し、これはイラン側からの攻撃に見えます。しかし、「フロント・アルタイル」(船籍マーシャル諸島)は右舷に被害を受けており、対岸はオマーンです。
それに、被害個所を画像で見る限り、大型の火砲や対艦ミサイルなど威力の大きなものではなく、どこの武装勢力も備えている肩打ち式の対戦車ロケットRPG-7のレベルのものではないかという印象です。喫水線から上に被害を受けていることから、魚雷や通常の機雷ではないこともわかります。RPG-7のレベルの火器だと、よほど沿岸近くを航行していないかぎり、射程距離的に無理があります。そう考えると、小型の高速ボートでの接近攻撃が可能性として浮かび上がってきます。
米国のCNNは13日、国防総省当局者の話として、イランのボートが攻撃を受けた船に横付けし、爆発しなかった「リムペットマイン」と呼ばれる遠隔操作可能な機雷を取り除く様子を米国の軍用機が記録していたと報道しました。国防総省が提供した動画は赤外線暗視装置によるもので、強力な船外機2基をつけた漁船改造型の高速艇に2連装の対空機関砲が装備されており、イランの革命防衛隊の可能性を示唆しています。画像で見る「リムペットマイン」は小型で、破壊力はRPG-7と似通っているのではないかと思います。革命防衛隊であったにせよ、どこかの武装勢力であったにせよ、タンカー攻撃によってペルシャ湾の緊張をかき立て、原油価格の高騰を狙う勢力による犯行という可能性まで視野に入れておいたほうがよいでしょう。
第3は、情報の整理というよりも、読売新聞の「特ダネ」についてです。14日付の読売新聞は、薗浦健太郎首相補佐官が6月になってからテヘラン入りし、ハメネイ師の外交顧問を務めるベラヤティ元外相と秘密裏に会談、安倍首相のイラン訪問の下準備をしたと伝えています。安倍首相の父・安倍晋太郎氏は1983年、外相としてイランを訪問し、イラン・イラク戦争でイラクを支持していた米国の冷たい視線を浴びながら当時のハメネイ大統領たちと会談、和平を模索したことで知られています。安倍首相は外相秘書官として同行し、両国の外相会談に立ち会いましたが、そのときのカウンターパートがベラヤティ外相だったのです。
その安倍首相のイラン人脈を使ってお膳立てした「密使」の薗浦首相補佐官は読売新聞記者から麻生太郎氏の秘書を経て国会議員になりました。だからこその読売の「特ダネ」だったのかもしれません(笑)。(小川和久)
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