がんの中で世界で3番目に多い大腸がんも、高所得の先進国では徐々に減っているようです。そんな中でも、米国では1950年代に生まれの人々より1990年代に生まれた人々の大腸がんの発生率が約4倍という異常事態が起きているそうです。メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』の著者で現役医師の徳田先生が、この驚きの事態を引き起こしていると疑われている新要因について解説しています。
若い人で大腸がんが増えている理由とは?
高所得国では減っている大腸がん
大腸がんは世界で3番目に多いがんです。2018年には約180万人が発症し、約88万人がこのがんで死亡しています。大腸がんの発生頻度を国別にみると、国民の平均所得によって異なることがわかります。 すなわち、高所得の国ではその発生がほぼ一定であるか、徐々に減る傾向を示しています。日本に加えて、北米やヨーロッパのいくつかの国々、そしてオーストラリアやニュージーランドなどです。日本では、1990年代から年齢調整罹患率はほぼ横ばい状態です。
高所得国で大腸がんが減っている年齢層は50歳代以上です。その理由は、大腸がんの危険因子の変化から説明されています。大腸がんの教科書的な危険因子は、肥満、加工肉摂取、運動不足、食物繊維摂取不足、そして喫煙です。高所得国で大腸がんが減っている理由は、その国々でタバコを吸う人が減っていることが大きいと考えられています。
高所得国で大腸がんが減っている理由には、もう一つあります。それは大腸がん検診の効果です。大腸がん検診で行われる大腸内視鏡によって、大腸がんの「前がん状態」であるポリープを切除することによってがんの発生が減っていることも要因です。大腸がん検診にはエビデンスがあるのです。
大腸がんの逆襲
大腸がんは、高所得の国々では全体的に減ってきているか、ほぼ一定の割合の発生率ですが、中所得または低所得の国々では急激に増えてきています。その理由は、肥満、加工肉食、飲酒、喫煙の増加、および食物繊維不足と運動不足と考えられています。
しかし最近10年間に限ってみると、大腸がんの発生トレンドに異常事態が見られています。それは、高所得国における40歳代以下の若年層で大腸がんが増えていることです。例えば、米国人をみてみると、1950年代に生まれた人々に比べて、1990年代に生まれた人々の大腸がんの発生率が約4倍となっています。 若年層での同様な増加傾向は、カナダ、デンマーク、アイルランド、ニュージーランド、ノルウェー、イギリスなどでも認められています。また、オーストラリア人をみてみると、20歳代の人々における大腸がん発生率が毎年約10%も増えてきています。