中国軍の近代化情報に抱く懸念。いつかどこかで見た国家崩壊の轍

 

一方、航空母艦の部隊を少なくとも南シナ海や東シナ海で常に4個群くらい展開できないと、米国と対抗することはできません。一般論で言うと、ひとつの打撃群を展開するためには3倍の打撃群が必要とされてきました。展開する部隊のほか、定期整備に入る部隊、教育訓練に当たる部隊です。このうち教育訓練の部隊を省いたとしても、4個群を展開するためには少なくとも8個の空母打撃群が必要になります。

打撃群は、空母のほかに航空機、5~6隻の護衛艦、補給艦などで編成されます。これを8組。これだけでも、ハンパではないお金が必要になることは明らかです。最先端を追い求め、近代化のために資金を投入する中国が、空母打撃群の保有とともに高度なASW能力を獲得できるとは思えません。 そこでデジャビュなのです。

 

旧ソ連は、レーガン政権の米国の挑発に乗せられたあげく、軍拡競争に敗北し、最後は連邦崩壊に至りました。ゴルシコフ提督のもと、外洋海軍(ブルーウォーター・ネイビー)を目指して建艦競争に引き込まれたことなど、私たちの世代にとっては記憶に新しいところです。 むろん、20年ほど前までの中国人民解放軍には「旧ソ連の轍を踏まない」との自覚がありました。しかし、昨今の人民解放軍の姿を見ると、そんなことはすっかり忘れているような気さえしてくるのです。

中国の軍事力が一定の水準で維持され、日本が神経を尖らせずに済むようだとよいのですが、米国の挑発に乗って国が崩壊するようになると、隣に位置する日本としても影響を懸念せざるを得なくなります。
米中間の軍事力の近代化競争には、そんな角度から注目していく必要があるのです。(小川和久)

image by: Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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