中国軍の近代化情報に抱く懸念。いつかどこかで見た国家崩壊の轍

shutterstock_1164296518
 

中国軍の近代化と最先端化が進んでいる状況について、さまざまなメディアが伝えていますが、それらを事実と認めつつ別の視点からの見方を示すのは、メルマガ『NEWSを疑え!』の著者で軍事アナリストの小川和久さんです。すなわち、先端技術を追い求めることにより置き去りにされる防衛課題であり、かつて米国の挑発に乗り軍拡競争に突入し、連邦崩壊を招いた旧ソ連の轍を踏むことへの懸念です。

どこかで見た?中国の軍事的動向

中国の軍事的動向のニュースがマスコミに出ない日はないと言えるほどですが、それを横目で眺めながら、軍事専門家の末席を汚す身としてはデジャビュ(既視感)、つまり、どこかで見たような光景だと思わざるを得ないでいます。 米国の国防情報局の報告書は、次のように警告しています。

「米国防総省傘下の情報機関、国防情報局(DIA)は15日、中国の軍事力の概況についてまとめた報告書を初めて発表した。報告書は、中国が台湾の統一を視野に東アジア全域での覇権確立に関心を抱いていると警告。さらに、アフリカ北東部のジブチや南シナ海での軍事拠点構築を通じ『地球規模の軍事勢力』の地位を築き上げ、米国の軍事的優位を脅かしつつあると強調した。(後略)」(1月16日付 産経新聞)

報告書には、国産空母、新型戦略爆撃機、米本土を核攻撃するための超音速滑空機(HGV)の建造や開発、サイバー分野の強化など、中国の軍事力の近代化が紹介されています。

確かに、そうした面は事実だと思います。しかし、中国が軍事力の近代化に取り組み、最先端の技術を追い求めるほどに、財政的な問題に直面するのは目に見えています。 それは、単に近代化のための資金が不足するだけではありません。近代化に国防費がつぎ込まれればそれだけ、これまで後回しにされてきた分野が放置され、穴があいたままになるのは目に見えています。

例えば、航空母艦の部隊(打撃群)を米国や日本の潜水艦から守るための対潜水艦戦(ASW)能力は、これまできわめて低い水準に置かれてきました。 ASW能力を高い水準にもっていくためには、静粛性に優れた攻撃型の原子力潜水艦、通常型潜水艦、高度な対潜能力を備えた駆逐艦、そして哨戒機を備え、三次元からASWを行えるようにしなければなりません。

print
いま読まれてます

  • 中国軍の近代化情報に抱く懸念。いつかどこかで見た国家崩壊の轍
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け