要は「最初から点数の低くなりそうな子どもを受けさせない」という方法である。そんなことが許されるのか。実は一部の子どもは、調査対象外になるのである。全国学力・学習状況調査の実施要項「3.調査の対象」から引用する。
(2)特別支援学校及び小中学校の特別支援学級に在籍している児童生徒のうち、調査の対象となる教科について、以下に該当する児童生徒は、調査の対象としないことを原則とする。
ア 下学年の内容などに代替して指導を受けている児童生徒
イ 知的障害者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の教科の内容の指導を受けている児童生徒
この規定自体は至極妥当である。特別な支援が必要な子どもへの配慮は絶対に必要である。しかし、問題は、この規定を悪用して「テストを受けさせないように特別支援級をすすめる」ということが、残念ながら一部で引き起こされているらしいということである。
その学校を非難するのは簡単である。そうではなく、問題の根本は、そこまでして学校や担任を追い込んでいるこの現状である。
私も経験があるが、学校には、極度に算数が苦手、文章が読めない、という子どもが一定数存在する。学年に一人や二人ではなく、場合によってはある学級に何人も集中することもある。「生徒指導が大変」という子どもを学年主任の学級に入れる代わりに、他の学級に学力的に厳しい子どもが集まる、というパターンである。また、特別支援級を設けずに、文科省も進める「インクルーシブ教育」を誠実に研究して進めている学校もある。
そうすれば、平均点の結果は目に見えている。指導力の差ではない。クラス間を比べることも無意味である。もしこれでどうこう言われるようなら「学力の低い子どもは担任したくない」と言い出す人が当然出る。教育の崩壊である。
学校間、都道府県間も同様である。無意味である、というより、とてつもない害悪である。
0点だろうが何だろうが、子どもには全く何の罪もない。勝手にランキングされて、大人たちが右往左往したあおりを食らい、はた迷惑な話である。
毎年国民の税金を60億円以上使って行うものが、教育現場を悪くしている現状。残念ながらこれを甘んじて受け入れることしかできないが、せめて小さくとも抵抗の声だけは上げていきたい。
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