医療少年院だけでなく、刑務所や少年院では、自殺企図は頻繁に起きることなので、いつも予防に心をくだいています。専門家としての知識や経験、ときに直感も大切です。しかし、一番大切なことは、「何か助けを求めたら、すぐ対応してくれた」という安心を与えてあげること、このことが子どもの精神や情緒を支えています。人間として、誰かに愛されるというのは、魂の喜びであり、人間として立っていける、心の寄る辺であると思います。
相手から、何かもらおうと思ってやっているわけではない。「君がそこに存在していてくれるだけで幸福だよ」、その気持ちを伝えています。君が存在しているだけで幸福、これが子どもにとっての「自己肯定感」の醸成につながるのです。そういった、毎日の子どもとの関わりがあってこそ助けることができるのだと思います。
もちろん、徹夜の勧めをしているわけではありません。先生がサラリーマンであってはならないと居丈高に言うつもりもありません。できれば、残業せず、仕事に見切りをつけて、しっかり休日を取ってリフレッシュしていただきたいと思います。けれども、子どもファースト、一番大事な場面では、決して時間と労力を惜しんではいけないと思うのです。それは、先生にしかできない仕事がそこにあるからです。
先生が聖職というのは、子どもや保護者、他人から見た姿です。努力の蓄積のうえで、様々な経験を積み、生徒たちから信頼される人格力を身につけたとき、周囲から見える、先生方、皆様の仕事をする風景が「聖職」なのだと思います。そして、真剣に解決に向けて迅速に行動する。心を込めて、全身全霊をこめて、子どもを愛する。誠の力をそそぐ。これがすべての始まりなのだと思います。
失敗があっても、失敗から教訓を学び、再び立ち上がってください。尊い教訓から反省し、生まれ変わり、新しい世界を見てください。そして、再び子ども達を導いてください。その姿を子ども達が見ています。あなたを待っています。それが先生、あなたの生きていく使命であり、子ども達の「心に寄り添う」、ミッションなのだと思います。
元・法務省中部地方更生保護委員会 保護観察官(社会福祉士・精神保健福祉士)
前名古屋市教育委員会 子ども応援委員 SSW
現福祉系大学講師 堀田利恵
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